名前 | 覆水盆に返らず |
読み方 | ふくすいぼんにかえらず |
意味 | 元に戻せないこと |
由来 | 出世した呂尚に元妻が復縁を望んで来た時の話 |
コメント | 呂尚も元妻も人間性に問題があるのではないかとも考えられる |
覆水盆に返らずは周王朝建国の功臣である呂尚とその妻である馬氏に関する逸話から出来が諺です。
呂尚は周の文王の軍師となり大出世を果たしますが、元妻が復縁を望んできました。
ここで呂尚は地面に水をたらし、土に混ざった水を差し「この水を元に戻す事が出来たら復縁する」と無理難題を述べています。
元妻は当然ながら水を元の盆に返す事が出来ず、この話が由来になったのが「覆水盆に返らず」の諺となります。
覆水盆に返らずの意味
覆水盆に返らずの意味は「元に戻す事が出来ない関係」を指します。
元になった話が周王朝で重用された呂尚と元妻の話で、元に戻す事が出来ない人間関係を指す事が由来となっています。
ただし、大事な物を破損して元に戻らない場合も「覆水盆に返らず」の言葉が使われたりします。
さらに極端に言えば「一度したことは取り返しがつかない」などを意味したりもします。
元に戻らない人間関係や元に戻す事が出来ない物品などの事を覆水盆に返らずだと思えばよいでしょう。
覆水盆に返らずの由来
離縁した妻
呂尚は後に周の文王や武王に仕えて大功を残すのですが、文王に仕えるまでの呂尚は庶民だったともされています。
庶民だったころの呂尚は結婚しており馬氏という妻がいました。
庶民であれば普通は農業などの仕事を行い生計を立てるわけですが、呂尚は朝から晩まで仕事もせず本ばかりを読んでいました。
働かない呂尚を見て妻は耐えきれずに離婚してしまったわけです。
呂尚は釣りをしていると周の文王に会い城に連れていかれるわけですが、この前に妻は離縁してしまいました。
妻は後の事を考えると大魚を逃した事になり、これが覆水盆に返らずの逸話に繋がって行く事になります。
覆水盆に返らずの由来
呂尚は周の文王から太公望と呼ばれ軍師とし帝王の師となります。
周の文王の時代に周は殷を滅ぼす事が出来ませんでしたが、周の武王の時代になっても呂尚は引き続き周に仕えました。
周の武王は牧野の戦いで殷の紂王を破りますが、功績の第一位を呂尚としたわけです。
これにより呂尚は周の臣下の中で最も尊い位となり、斉の国も与えられ大出世を遂げる事になります。
呂尚の大出世を知った元妻は呂尚の前に姿を現し復縁を望んできました。
ここで呂尚は水の入った盆をひっくり返し水を地面に落とし、次の様に述べています。
呂尚「この地面にこぼした水を元の盆に戻してみよ」
元妻は必死に地面に落ちた水を元の盆に戻そうとしますが、手が泥だらけになるだけであり上手くいきませんでした。
妻は地面に落ちた水を盆に返せない事を悟ると、呂尚は次の様に述べました。
呂尚「地面にこぼした水は元には戻せない。私と其方の関係も元に戻せないのだ」
こうして呂尚は元妻との復縁を断わっています。
盆から地面に落ちた水は元に戻す事が出来ない事から覆水盆に返らずの諺が誕生しました。
呂尚の言葉から分かる様に、覆水盆に返らずの意味は「元に戻す事が出来ない事」を指すわけです。
呂尚は厚かましい妻との復縁を断わりました。
呂氏と馬氏の人間性
覆水盆に返らずの話ですが、元夫が大出世を果たした所で復縁を申し込む馬氏(元妻)は、図々しと感じた人も多いのではないでしょうか。
それに対し呂尚が元の妻に対して行った覆水盆に返らずは、かなり意地悪なやり方だと言えるでしょう。
覆水盆に返らずの逸話を見る限りでは、自分を見捨てた呂尚は元妻を恨んでいたのかも知れません。
ただし、覆水盆に返らずに登場する呂尚は意地悪であり、妻は図々しく「どっちもどっちだ」などの見解もあります。
人間性で考えれば呂尚も元妻も糟糠の妻は堂より下さずの宋弘やその妻に及ばないと言えるでしょう。