チョークポイントはシーレーンの要衝を指す言葉です。
地政学ではランドパワーとシーパワーがありますが、シーパワー国家の生命線とも言えるのが、チョークポイントです。
チョークは「塞ぐ」や「首を絞める」などの意味があります。
チョークポイントを抑える事で、その国の物流を止める事が可能となり、直接敵国を攻撃しなくても、その国を締めあげる事が出来ます。
尚、シーレーンとチョークポイントが重要視される理由として、海での輸送が最もコストに優れているのが現状です。
チョークポイントは世界で十カ所ほど存在し、海峡、運河、補給ポイントとなっています。
因みに、海峡や補給ポイントなどのチョークポイントは元々あった地理的な要所であり、運河は人工的に作り出したチョークポイントとも言えるでしょう。
日本にとっても中東から石油などが運ばれてくるのに、ホルムズ海峡やマラッカ海峡を通っており、非常に重要な地点とも言えるでしょう。
チョークポイントは地政学的に見ても、非常に重要な地域となります。
チョークポイントと日本
チョークポイントは先にも述べた様に、世界で十カ所ほど存在します。
その中でも、日本にとって特に重要なのがホルムズ海峡とマラッカ海峡になるはずです。
日本は石油を中東から購入している現実があります。
中東の石油が日本まで届くには、ペルシア湾からホルムズ海峡に経て、インド洋を通り、マラッカ海峡、バシー海峡を抜けて漸く日本に到着するわけです。
日本はシーレーンが断たれてしまうと、経済活動が困難になる現実があります。
後述しますが、ホルムズ海峡の対岸国であるサウジアラビアとイランは争いが起きやすく、日本もタンカーを攻撃されたり、自衛隊を派遣する事態にもなっています。
チョークポイントの位置
イギリス海峡
イギリス海峡はユーラシア大陸とイギリスの間にある海峡を指します。
イギリス海峡もチョークポイントの一つです。
イギリス海峡の中で、海峡の幅が最も狭くなる部分をドーバー海峡と呼んだりもします。
ドーバー海峡は世界中のスイマーが遠泳を行う事でも有名です。
ジブラルタル海峡
ジブラルタル海峡は地中海の出入り口にして、ヨーロッパとアフリカの間になる海峡です。
ジブラルタルの位置を考えると、スペインやモロッコが管理するものと思うかも知れません。
しかし、実際にはジブラルタルはイギリスの飛び地であり、イギリス軍が駐屯しています。
昔からジブラルタル海峡は「地中海の鍵」とも呼ばれ、重要拠点として知られていました。
ボスボラス海峡
ボスポラス海峡はトルコにあるアジアとヨーロッパを分ける地点でもあり、チョークポイントの一つに数えられています。
ボスポラス海峡は黒海とマルマラ海を繋ぐ海峡でもあります。
ボスポラス海峡はトルコの首都イスタンブールにも面しており、ダーダネルス海峡と共に航海の要衝とされています。
尚、ボスポラス海峡に日本の大成建設が、横断鉄道を開通するなどし「偉業を達成した」と注目を集めています。
スエズ運河
スエズ運河はエジプトにある人口で造った運河です。
パナマ運河と並び、世界で最も有名な運河の一つだと言えます。
スエズ運河は地中海と紅海を繋ぐ運河でもあり、チョークポイントの一つでもあります。
2021年3月にコンテナ座礁事故で通行が出来なくなり、世界経済に大きな影響が出ました。
尚、スエズ運河は1レーンしかなく、一方通行となっているのが特徴です。
スエズ運河では途中にあるグレートビター湖で停泊し、すれ違いをする事で地中海と紅海の両方に行き来する事が出来る様になっています。
この様なすれ違いが出来るポイントがスエズ運河には、五カ所ほど存在しています。
スエズ運河はエジプトの一大収入源になっているとも言えるでしょう。
因みに、日露戦争で日本がロシアと戦った時に、日英同盟によりイギリス軍がスエズ運河を封鎖した事も、日本勝利の要因として考えられています。
バブ・エル・マンデブ海峡
バブ・エル・マンデブ海峡もチョークポイントの一つとして知られています。
バブ・エル・マンデブ海峡の名前の由来は「涙の門」だと言われています。
バブ・エル・マンデブ海峡はイエメンとジブチの間にある海峡であり、スエズ運河の先になる海峡とも言えます。
バブ・エル・マンデブ海峡を進むとアデン湾、アラビア海がありソマリアにも面しています。
ソマリアは海賊が多発する事で有名でしたが、にほんのすしざんまいの社長が海賊にならなくてもよい様に、漁師の技術を教えた事でも有名です。
喜望峰
喜望峰はアフリカの南端にあり、大航海時代にポルトガルが発見して以来、重要な拠点としてチョークポイントの一つに数えられています。
喜望峰よりも南に行ってしまうと、強風が吹き荒れており、渡航が困難となります。
喜望峰の南の強風地帯を示す言葉に「吠える40度」「狂う50度」なる言葉もあり、喜望峰の風の強さが分かるはずです。
大航海時代から喜望峰ルートと呼ばれていますが、重要な補給ポイントの一つであり、チョークポイントの一つだと言えます。
ホルムズ海峡
ホルムズ海峡は対岸にイランとサウジアラビアがあり、この二国は伝統的に仲が悪いとも言えます。
ホルムズ海峡は問題が起きやすい地域でもありますが、日本のとって最重要とも言えるチョークポイントです。
ホルムズ海峡は交通の難所とも言われ、S字カーブの部分は高い航海技術が必要だと言われています。
ホルムズ海峡では2019年6月13日に、日本が運航するタンカーが何者かの攻撃を受けニュースとなりました。
このの時に日本の安倍晋三首相がイランの首脳部と話し合いを行った事もあり「イランの仕業」だともアメリカの自作自演だとも言われています。
アメリカとイランに仲良くされてしまうと困る国もあり、真相は不明です。
2020年にも海上自衛隊の護衛艦がホルムズ海峡に派遣しています。
ホルムズ海峡を封鎖されてしまうと、日本は中東から石油が届かなくなり、マラッカ海峡と並び死活問題のチョークポイントだと言えるでしょう。
中東地域における⽇本関係船舶の安全確保に関する政府の取組(防衛省・自衛隊)
マラッカ海峡
マラッカ海峡はマレー半島とインドネシアのスマトラ島に間にあり、ここもチョークポイントの一つです。
マラッカ海峡は世界的にも海賊が多い場所として有名となっています。
マラッカ海峡は日本の原油の8割が通るとも言われ、日本にとっても死活問題の場所でもあります。
それと同時に、近年、中国のマラッカ海峡への進出が盛んになり、警戒すべき事態に発展すべき地域になっています。
マラッカ海峡は日本にとっても、死活問題のチョークポイントであり、ここを中国に抑えられてしまうと、日本は中国の逆らう事が出来なくなる危険があるわけです。
パナマ運河
パナマ運河はスエズ運河やキール運河と並ぶ、世界三大運河の一つです。
中米のパナマ共和国のパナマ地峡を開削して出来た運河であり、太平洋と大西洋を繋ぐ運河でもあります。
パナマ運河はチョークポイントだけではなく、閘門式運河としても有名です。
パナマ運河を建設したのはアメリカですが、1999年12月31日にパナマに返還されました。
マゼラン海峡
マゼラン海峡は大航海時代にマゼランが、この海峡を通過した事で名前が採用されています。
南アメリカ大陸の南端に、位置するマゼラン海峡もチョークポイントの一つです。
ただし、1914年にパナマ運河が出来てからは、重要度が薄れました。
それでも、南米の国にとっては今でも重要視する地点であり、チョークポイントだと言えます。