楊敏は正史三国志の蔣琬伝に登場する人物です。
楊敏は蜀の劉禅の時代の人であり、諸葛亮の後継者となった蔣琬を批判しました。
蔣琬の係官は楊敏の発言を問題視しますが、蔣琬は楊敏の言葉を全く気にしなかった話があります。
後に楊敏が事件により、獄に繋がれ多くの者が蔣琬により処刑されると考えました。
しかし、蔣琬は感情ではなく公正さを出した事で、楊敏は重罪を免れる事が出来たわけです。
因みに、楊敏は正史三国志に登場しますが、どちらかと言えば、蔣琬の性格を現わす逸話として登場したに過ぎません。
楊敏は督農になった記録はありますが、どの様な実績があったのかは不明です。
尚、楊敏は三国志演義には登場しません。
前任者に及ばないと批判
正史三国志によれば、督農だった楊敏は蔣琬を次の様に批判したと言います。
※正史三国志 蔣琬伝より
楊敏「蔣琬は事にあたっては右往左往し、全く前任者に及ばない」
諸葛亮の後に蜀の中心人物になった蔣琬に対し、楊敏は批判した事になります。
楊敏は蔣琬に直接言ったわけではないのですが、係官がこの言葉を聞き知り、蔣琬に報告し楊敏の取り調べをしたいと述べました。
しかし、蔣琬は次の様に答えています。
蔣琬「私は事実として前任者に及ばないのだから、取り調べを行う必要はない」
蔣琬の前任は諸葛亮であり、蔣琬が本気で諸葛亮に及ばないと思っていたのか、謙遜したのかは不明ですが、楊敏の取り調べをしようとはしなかったわけです。
蔣琬は取り合いませんでしたが、係官は納得せず楊敏が「右往左往している」と蔣琬を評価した事を問題視しようとしました。
ここでも、蔣琬は問題にしようとせず、次の様に述べています。
蔣琬「本当に前任者に及ばないのであれば、事を合理的に処理する事は出来ないであろう。
上手く処理する事が出来ないのであれば、それこそ右往左往する事になる。
いったい何を諮問する事があるのだろう」
蔣琬はあくまで楊敏を不問としました。
蔣琬は他人の言葉に対し、冷静に判断し事を荒立てる事が無かったのでしょう。
蔣琬の性格が分かる逸話でもあります。
重罪を免れる
後に楊敏はある事件が元で、獄に繋がれる事になります。
正史三国志には「事件」とあるだけで、どの様な事件なのかははっきりとしません。
過去に楊敏は蔣琬を批判しており、蔣琬もその事を知っていた事から多くの人が「楊敏が死罪になる」と噂し心配したとあります。
しかし、蔣琬は個人的な感情で判断を下す人間ではなく、楊敏は重罪を逃れる事が出来たと言います。
楊敏は法律通りの罰は受けたかと思いますが、必要以上に重い罪は受けなかったという事なのでしょう。
蔣琬の前任者である諸葛亮は、清貧を貫きながらも法律には厳しかった話があります。
諸葛亮も好悪の感情で動かなかった様に、後任の蔣琬も好悪の感情で動かなかったわけです。
尚、蜀の廖立などは蔣琬と李邵の前で劉備、関羽、向朗、文恭などを批判し罰せられた記録が残っています。
しかし、楊敏が蔣琬を非難したと言っても、廖立ほどは酷くは無かったのでしょう。