新田義顕は新田義貞の嫡子として誕生しています。
建武政権で新田義顕は従五位になるなど重用され、足利尊氏が九州に落ち延びると侍所の一番頭人にもなっています。
新田義貞が北陸に転戦すると新田義顕も付き従い、金ヶ崎城の戦いが勃発しました。
金ヶ崎城の戦いで新田義貞が援軍を求めて城を出ると、新田義顕が城主となります。
しかし、城内では飢えにより苦しみ、新田義顕は尊良親王と共に自害しました。
新田義顕の出自
新田義顕は新田義貞の子として誕生しました。
小太郎を名乗っていた様であり、新田氏の正統な後継者として位置づけられていたのでしょう。
新田義顕の母親は得宗被官の安東氏の娘であり、北条氏と新田氏の関係に近さが分かるはずです。
鎌倉時代末期に後醍醐天皇が倒幕を目指し護良親王や楠木正成が奮戦する中で、足利尊氏が朝廷軍に寝返りました。
足利尊氏は六波羅探題陥落を目指すだけではなく、同じく足利一門の新田氏に朝廷側として参戦する様に指令を出しました。
この時点で新田義顕は１０代だと思われ、足利義詮と共に鎌倉にいたとする説もあれば、上野にいたのではないかとする説があります。
ただし、最終的に新田義顕は新田義貞の軍に加わり、鎌倉幕府の滅亡を見届けたのでしょう。
上洛
後醍醐天皇は新田義貞だけではなく、新田義顕も倒幕の功労者とし越後と従五位上を拝領しました。
建武の新政では新田義顕は新田義貞の嫡流として、評価されたと言った所なのでしょう。
鎌倉の治安を守る等をしていた新田義貞ですが、悪い風聞が流れた事で京都に移る事になります。
新田義貞と共に新田義顕も上洛したとみる事が出来ます。
武者所頭人
北条時行による中先代の乱を決起として、足利尊氏は建武政権から離脱しました。
新田義貞は後醍醐天皇の命令で脇屋義助と共に、足利尊氏討伐に向かいますが箱根竹ノ下の戦いで敗れています。
しかし、近畿での戦いは奥州から北畠顕家が援軍として駆け付けた事で、朝廷軍が勝利し、足利尊氏は九州に落ち延びました。
足利尊氏との戦いがひと段落すると、新田義顕は越後守となっており、武者所の一番頭人に就任していた事が分かっています。
さらに、脇屋義助の子である脇屋義治が五番頭人に選出されています。
この時期に後醍醐天皇が如何に新田一族を信頼し期待していたのかが分かるはずです。
後醍醐天皇の裏切り
足利尊氏は九州で勢力を回復させると、怒涛の勢いで楠木正成と新田義貞を破り湊川の戦いで勝利しました。
後醍醐天皇は比叡山に籠りますが、足利尊氏と和議を結び比叡山を降りる事を決断しています。
新田義貞は最初は信じませんでしたが、洞院実世や堀口貞満の意見に心を動かされ、後醍醐天皇の様子を見に行く事にしたわけです。
堀口貞満が最初に後醍醐天皇を発見すると、丁度下山する所でした。
続いて新田義貞らも現場に到着しますが、この中には新田義顕もいたわけです。
新田義顕は新田一族が懸命に尽くした後醍醐天皇の裏切りを目撃し、衝撃が走ったと考える事が出来ます。
後醍醐天皇は恒良親王と尊良親王を新田義貞に預け、恒良親王に譲位を行い新田義貞を納得させました。
新田義顕は父親の新田義貞らと共に、北陸に移ったわけです。
金ヶ崎城の戦い
北陸に移動した新田一族は越前の金ヶ崎城で籠城戦を展開する事になります。
この時の金ヶ崎城内には新田義顕もいました。
足利尊氏は新田義貞を脅威だと感じており、越前守護の斯波高経だけではなく、細川頼春や高師泰にも支援させています。
一時は脇屋義助が足利軍の背後を取り攻撃するなど活躍しますが、戦力的に劣っており厳しい戦いが続く事になります。
こうした中で金ヶ崎城の大将たちは新田義貞、脇屋義助、洞院実世らは援軍を求めて城を脱出させました。
太平記によると、この時の戦力は足利軍１０万以上に対し、新田義貞の軍は五百に過ぎなかったとも伝わっています。
新田義貞が城を出た事で、金ヶ崎城は新田義顕が総大将としての役目を果たす事になります。
金ヶ崎城の戦いは、ここから地獄絵図となっていきます。
新田義顕の最後
新田義顕は総大将となりましたが、圧倒的に食料が不足しており、最終的に死んだ死体を人間が食べる様な状態になってしました。
幕府軍の名将である斯波高経や石橋和義、高師泰、仁木頼章らは、城が飢えている事を悟ると一気に攻勢を仕掛けてきました。
新田義顕は最後を悟り、恒良親王を脱出させると、尊良親王の前に行き「自害の作法を教える」と述べて、自害し最後を迎えています。
尊良親王も新田義顕を追い自害しました。
これにより金ヶ崎城の戦いは幕府軍の勝利で幕を下ろす事になります。
新田義顕の首は獄門に懸けられたとされています。
しかし、新田義貞はまだ生きており、新田義顕の弟である新田義興が新田氏の嫡流となりました。
