縛虎申はキングダムの蛇甘平原の戦いに登場する秦の千人将です。
信が始めて伍を組んだ時の司令官になったのが縛虎申となります。
縛虎申は秦軍の総大将である麃公に対し、絶大なる信頼を寄せていました。
キングダムの蛇甘平原の戦いでは、麃公の意図を縛虎申は理解しており、果敢な突撃を行い魏軍の副将である宮元を討ち取りますが、黄離弦の矢で致命傷を受けており戦死しました。
縛虎申が最初に登場した時は「嫌な奴」に思ったのかも知れませんが、戦いには美学もあり「カッコいい」と感じる様になり、最後は縛虎申の死を惜しんだ人も多い様に感じています。
縛虎申を見ていると千人将では勿体ないと感じたのは自分だけではないでしょう。
戦場において信も縛虎申から様々な事を学んだはずです。
非常に残念に思うかも知れませんが、縛虎申はキングダム作者である原泰久先生が考え出した架空のキャラクターであり、史記や戦国策などの史書には一切登場しません。
尚、映画キングダムでは渋川清彦氏が演じました。
縛虎申の登場
蛇甘平原の戦場に信らは到着しますが、ここにいたのが千人将の縛虎申でした。
縛虎申は兵士達をグズ呼ばわりしたり、状況を説明して欲しいと願う部下に対し「歩兵如きが戦の全容を知る必要はない」と言い放つなど、かなり傲慢な態度が見えました。
部下に対し「上官に口答えするな」と述べたりもしており、縛虎申はかなり威張っており、読者は「こいつは無様な死に方をするのでは」と思った人も多いのではないでしょうか。
初登場時の縛虎申を見る限りでは、最終的に「敵に対し命乞いをするのではないか」とすら思った人がいる様に感じています。
縛虎申と壁
剣を振るう縛虎申に対し、同じく千人将の壁が前に進み出て「むやみに兵を傷つけるな」と窘めています。
壁は兵たちに説明をするべきだと述べますが。縛虎申は「新参者が出しゃばるな!」と告げるも壁も引かず「千人将同士遠慮なく意見させてもらう」と毅然たる態度を見せました。
縛虎申と壁の対立はありましたが、ここで尚鹿が間に入り止めています。
壁が兵士達の前で演説を行い士気を高めますが、縛虎申はそれをみて言葉を発する事が出来ませんでした。
これまでの縛虎申は単なる嫌な奴でしかなく、実力を疑問視した人も多いのではないでしょうか。
威張っているだけの将軍だと思った人も多い様に感じました。
縛虎申隊への配属
秦軍の兵士の中で最小単位は伍であり、5人で一つの部隊を形成していました。
澤圭をリーダーとする信、羌瘣、尾平、尾到らの伍は縛虎申の軍に配属される事になります。
ここで信たちは縛虎申は「特攻好きのいかれた将で、毎回大勢死ぬ」と聞かされました。
澤圭や信の伍は最弱であり、イチコロだとも聞かされています。
縛虎申の制止
信たちは最前線におり、縛虎申の「全軍突撃」の言葉を共に、魏との戦闘に入りました。
ただし、ここで戦闘に入ったのは最前列の歩兵だけであり、騎馬隊を指揮する千人将の縛虎申は後方で待機していました。
魏の副将である宮元は戦車隊を出撃させ、信たちは大苦戦しますが、秦軍の大将軍である麃公は兵を繰り出そうとせず待機を命じています。
麃公の動こうとしない態度に対し、壁はしびれを切らし砂埃で全く見えなくなってしまった前線に確認に行こうとしますが、縛虎申は「そんなことは貴様のやる事ではない」と述べ制止しました。
縛虎申は麃公を信じており、動く必要はないと考えていたわけです。
縛虎申の態度は堂々としており、この頃から縛虎申が頼りになる武将だと思えて来た人も多いのではないでしょうか。
縛虎申の思想
壁は歩兵が全滅するのを見ていられず「伝令系統の問題」を疑い歩兵を見殺しにしたくないと言いますが、縛虎申は次の様に言い放ちました。
貴様は歩兵を助けるためにわざわざ戦場に来たのか それとも魏軍に勝利するために来たのか
この言葉に縛虎申の思想の全てが詰まっている様にも感じました。
縛虎申は魏軍に勝つ為に戦場にいるのであり、決して部下を助ける為にいるわけではないと言った事になるでしょう。
麃公への信頼
前線の歩兵が次々に戦死する姿を見て、壁は麃公の采配に疑問を持ちました。
しかし、縛虎申は兵士が戦場で死ぬのは「勝利のための栄誉ある戦死だ」と述べています。
縛虎申は麃公の采配に絶大なる信頼を寄せており「あの方ほど戦に強い将を他に知らぬ」と述べています。
縛虎申は麃公の考えは分かりませんが、言うとおりにしていれば必ず勝つと確信していたのでしょう。
それ故に、縛虎申は前線で歩兵が幾ら死のうとも、動揺を見せなかったわけです。
騎馬隊出撃
信は戦車隊を討つ等していますが、大きな戦場の中での小さな勝利であり、秦軍は魏に圧倒されていました。
こうした中で魏の副将・宮元は本軍の守備を残し、全軍出撃を命じています。
この時に麃公は第四軍の騎馬隊に出撃を命じました。
縛虎申も当然ながら前線に向かいますが、途中で信を見て戦車隊を攻略し、麃公を動かした事を悟ります。
ここが縛虎申が信たちを最初に認めた瞬間だったのでしょう。
縛虎申は壁に対しては生真面目な千人将で頭の回転は早いとしながらも「騎馬突撃の意味をくみとっていない」としています。
この時の縛虎申の戦術眼は壁のさらに上を行っていました。
騎馬隊突撃
縛虎申は麃公の騎馬突撃は「対局を覆すこと」だと悟っていました。
縛虎申は歩兵を整列させると、歩兵たちを縛虎申隊の誇りであり、秦国の誇りだと告げています。
ここで縛虎申は敵陣の中央突破を行い魏の副将である宮元の首を取ると宣言しました。
兵士達は不安がりますが、羌瘣が意味を説明し皆を納得させています。
この時に、信は敵の戦車から奪った馬に乗っており「歩兵の分際で騎馬した者がいる」と縛虎申に報告する者がいましたが、縛虎申は「放っておけ」と述べています。
それと同時に残党を率いていた信に一目置きました。
戦いに勝利する為であれば、信が馬に乗っている事など、縛虎申にとってみればどうでもいい事だったのでしょう。
縛虎申の騎馬隊が敵陣を駆け抜け、後ろから歩兵たちが続く事になります。
こうした状況の中で麃公は、第一軍、第二軍の騎馬隊にも突撃を命じました。
縛虎申の突撃を見た者は「全滅する」と言いますが、壁は援護に入る事になります。
しかし、縛虎申の騎馬隊にも犠牲者が目立ち始めました。
敵陣突破
縛虎申はひたすら戦場を駆け抜け「どうした魏兵。その程度か」「勝つためなら俺は全てをくれてやるぞ」と言い聞かせ、突撃を止めませんでした。
これを見た壁は戦の対局がここにあると悟る事になります。
壁も縛虎申の魂が移ったかの如く「勝たねば何も残らぬ」と奮戦しました。
遂に縛虎申隊の46名は敵陣を突破し、丘の上に宮元まであと一歩の所まで来たわけです。
10倍の恩賞を約束
縛虎申は丘の上を駆け上がり宮元を討つと述べました。
尾平らは体力が尽きており顔に出ていましたが、縛虎申は体力が残っていない事を知りながらも「頂上まで来なかった者は後で俺が斬る!」と告げました。
縛虎申は勝利だけを目指しており、そこには思いやりは存在しなかったわけです。
それと同時に、頂上まで来たのは最大の功労者としての栄誉を得る事になり、普段の恩賞の10倍を約束しました。
縛虎申の恩賞の約束により尾平、尾到らはやる気を取り戻しています。
縛虎申は信賞必罰が重要だと知っていた事になります。
将は強いだけではダメ
宮元との最終決戦を前に、縛虎申は信に伍を離れ先頭に来るように命じました。
縛虎申は砂塵が厚く歩兵の早さでゆっくりと近づけば、中腹の兵に気付かれないと考え、気配を殺す様に命じています。
縛虎申は突撃するだけの武将ではなく、知的な部分も持ち合わせていました。
状況を察知し変化に対応できる武将でもあったのでしょう。
信は縛虎申を見て将は強いだけではダメだと悟ります。
縛虎申は「でかい手柄が欲しければ振り返らずに ひたすら斬り進め」と告げ、出撃させています。
全て等しく死線の上にいる
中腹の二千の魏兵は不意を衝かれ混乱しました。
中腹の混乱を宮元も知る事となり、黄離弦を呼びました。
黄離弦は中華十弓に入る腕の持ち主です。
ここで縛虎申は騎馬隊に全力前進を命じ、歩兵と切り離す様に命じています。
信は後方の歩兵は敵の追撃を振り切る為の時間稼ぎだと悟ると、信は狼狽えますが、縛虎申は後ろを振り返るなと述べ、次の様に言い放ちました。
先陣も後塵も騎馬も歩兵も等しく死線の上にいる 全ては勝利のために それが軍というものだ
信は縛虎申と戦場を共にする事で多くを学びました。
この時点で縛虎申の事を「カッコいい」など多くの人が好きになった様に感じています。
縛虎申の勇気
縛虎申は他人の心配をしている暇はない。
先陣には常に最も過酷な道が用意されていると述べました。
縛虎申は口だけではなく、自ら先頭に立ち戦い続けたわけです。
勿論、部下がやられても振り返る事はしません。
頂上を目指す縛虎申の軍の下方では、尚鹿や壁が戦いながらも見ていました。
ここで壁は戦には縛虎申の様な将も必要だと気付く事になります。
尚鹿は「あいつ(縛虎申)は味方が大勢殺られた時ほど無茶をする」と述べ、今回の突撃がかなり酷いと述べています。
縛虎申は味方の屍を乗り越えて突撃を敢行する猛将でもあったのでしょう。
致命傷
魏の連弩隊により縛虎申隊の騎馬隊にも犠牲者が出始めました。
しかし、縛虎申は連弩隊を見て「兵法家風勢が好みそうな最終防衛だ」と考え、突撃を敢行しています。
丘の上にいた弓の名手である黄離弦は、縛虎申が将だと判断しました。
黄離弦の放った矢は縛虎申の左胸を貫く事になります。
これを見た黄離弦は勝利を確信しますが、縛虎申は踏みとどまり前進を続けています。
この時の縛虎申は致命傷を負っており、普通では助からない状態だったのでしょう。
信が縛虎申を庇う様に馬を走らせ、最終的に黄離弦を討ち取りました。
縛虎申と馬
縛虎申は傷つきながらも、魏の副将である宮元の本陣まで辿り着いたわけです。
縛虎申は宮元に対し「貴様の頭では何が起こっているか理解できまい」と述べ「座して謀る兵法が戦の全てと思っている貴様の頭ではな」と続けました。
信の馬はダメになりますが、それを見た縛虎申は「主のために死力をふりしぼる。いい軍馬とはそういうものだ」と述べると、縛虎申の馬も崩れ落ちています。
縛虎申は軍馬に対し「悲しみではなく誇りで送ってやれ」と告げました。
この辺りは縛虎申の戦の美学が詰まっている様に感じています。
縛虎申の美学
宮元は将が無茶をして死んだ者を「犬死」としましたが、縛虎申は次の様に述べました。
奴ら全員の躯の橋を渡って 俺はここまで来たのだ。
この辺りの言葉は縛虎申の戦での美学が詰まっていると言えるでしょう。
縛虎申は宮元に刺されますが、宮元を討ち取っています。
映画キングダムでは、近づいてきた宮本に「目が見えない私に」とするセリフがあり、既に致命傷により目が見えない状態になっていた事も分かります。
最後の命令
縛虎申は宮元を討ちますが、そのまま倒れ込みました。
既に致命傷を負っており、体力の限界に達していたのでしょう。
縛虎申が宮元を討つと張啓は魏の旗を倒す様に命じています。
部下達は縛虎申に報告を入れ兵士の数が10人未満になってしまったと告げました。
縛虎申の突撃により多くの者達が犠牲になってしまたっとも言えるでしょう。
縛虎申が宮元を討ち取り戦いは勝利しましたが、中腹の魏兵が迫ってきており、部下達は丘を降りる様に進言しました。
さらに、魏の呉慶率いる本隊も近づいており、絶望的な状況となります。
しかし、信は戦うと宣言しますが、縛虎申は「勇猛と無謀は違う。そこをはき違えると何も残さず早く死ぬ」と語りました。
縛虎申は信に兵たちと共に丘を降る様に命令しています。
この時の縛虎申は自分の役目は終えたと感じていたのか、信たちに対し生きる様に命じたとも言えます。
これが縛虎申なりの優しさでもあったのでしょう。
縛虎申の最後
縛虎申は自分で立つ事は出来ず、置いて行けと命令しますが、部下達は聞かず二人の部下が肩を貸しました。
部下達は縛虎申に呉慶の軍と反対の山を降りると述べ、途中で守備軍と斬り合いになるが辛抱して欲しいと告げています。
縛虎申の部下達は「敵が来る場所に置いていけない。と述べ、逝かれるなら我らの肩で」と言い放っています。
信は縛虎申と部下の結束の強さを見ました。
縛虎申の部下により信は宮元の首を託されています。
信たちは危機に陥りましたが、ここで王騎と騰が突如として現れました。
縛虎申の部下は「宮元の丘に我らの旗が立ちましたぞ。あなたの武勇が斬り開いたのです」と伝えますが、既に縛虎申は虫の息だったわけです。
壁は縛虎申を見て「まだお前から学ぶことがあったような気がする」「残念だ縛虎申・・」とその死を惜しみました。