故事成語

捲土重来の由来や意味を解説

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宮下悠史

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名前捲土重来
読み方けんどちょうらい、けんどじゅうらい
別名捲土重来を期す
意味一度敗れた者が再起し戦いを挑むこと
コメント杜牧の題烏江亭から誕生した故事成語

捲土重来は唐の詩人である杜牧が項羽の最後を見て思った事を吐露した詩から始まった故事成語です。

杜牧の「題烏江亭」から誕生した故事成語でもあります。

捲土重来の意味は「一度敗れた者が再起しリターンマッチに挑む」事を指し、杜牧が項羽が死を選んでしまった事に対する残念な気持ちから生まれ故事成語とも言えるでしょう。

尚、捲土重来は「捲土重来を期す」として使われる事も多いです。

捲土重来の由来

捲土重来の由来を知る上で項羽を知らなければなりません。

項羽は中国史上でも屈指の名将でありを滅ぼし西楚の覇王として天下に君臨しました。

項羽は戦いには滅法強く60万を超える劉邦の軍を3万で破ったなどの話も伝わっています。

しかし、西楚の軍は項羽以外では大して戦績を上げる事が出来ず、項羽に味方した魏豹、陳余、龍且らは漢の韓信に敗れました。

無敗の項羽も劉邦に垓下の戦いで敗れ四面楚歌となり軍を失い逃亡する事になったわけです。

項羽は江東を目指し烏江亭に到着し「長江を渡れば江東」という所まで来ました。

ここで亭長が「江東は土地柄は狭いですが、数十万の人口がおり王が拠るには充分な土地です。私が貴方を江東にお渡しします」と項羽に述べています。

項羽は亭長の好意に感謝しつつも「儂は暴秦を倒す為に8千人の若者たちと江東を出たが、今や共に帰る者は一人もいない。私は彼等の父兄に合わす顔が無い」と告げました。

この後に項羽は劉邦軍に徒歩で突撃を仕掛けて大暴れしますが、最後は自決し世を去りました。

項羽の死を惜しんだのが唐の詩人である杜牧です。

捲土重来は杜牧の詩から生まれた故事成語となります。

杜牧と捲土重来

杜牧は七言絶句で項羽への気持ちを詩にしました。

これが「題烏江亭」と呼ばれています。

勝敗兵家言不期 包羞忍耻是男児

江東子弟多才俊 捲土重来未可知

戦の勝敗は兵法家であっても予想は出来ない。故に例え戦いに敗れても恥辱を耐え忍ぶのが男児である。

江東の子弟には俊才の者が多い。(彼らを率いて)土を巻き上げ再びやってきたら、どうなったのかは分からない。

杜牧は項羽が江東に行かず死を選んだ事を惜しんだわけです。

お気づきの方も多いかと思いますが、杜牧の七言絶句の最後の段落に「捲土重来」という言葉が入っており、これが故事成語となったわけです。

捲土重来の意味

捲土重来の意味ですが「捲土」の意味が「土埃を巻き上げる」であり、「重来」の意味が「重ねて来る」となっています。

つまり、一度戦いに敗れた者が土埃を巻き上げながら再びやってくる様子を指します。

捲土重来は、戦いに敗れたり失敗した者が勢いを盛り返し再起を図る事でもあります。

杜牧の題烏江亭を読んでも項羽が江東に渡り、新たな軍を得て再起し土埃を巻き上げ再び劉邦との戦いを望んで欲しかった気持ちを現わしているのが分かるはずです。

物事において勝者と敗者は必ず出ますが、敗者復活の意味を込めて捲土重来の言葉が使われる事も多いと言えます。

捲土重来にある背景

捲土重来の言葉を考える上で、歴史的な背景を考える事も大事だと思いました。

項羽劉邦と共にを滅ぼした英傑ではありますが、天下統一後の楚漢戦争では僅か4年ほどで滅びています。

勝者側で前漢の建国者である劉邦からしてみれば項羽は敵となりますが、秦を滅ぼすのに共闘した歴史もあります。

項羽は大量虐殺をしたりもしますが、部下に対して涙を流すなど人情の人でもありました。

こうした事情があり項羽に対する様々な説話が生まれ、司馬遷の史記の項羽本紀では名文と呼ぶに相応しい内容となっています。

司馬遷も最後の部分では項羽を批判していますが、項羽本紀の本文では同情的な描き方もしているわけです。

項羽の儚さの様なものが後世に伝わり、杜牧の捲土重来の言葉が誕生したと感じています。

実際に項羽が江東に渡り軍勢を整えて土埃を巻き上げ再び劉邦と対決する姿を見たいと思った人は多いのではないかと感じました。

項羽は性格に問題があるとも言われますが、その死を多くの者が惜しんだと言えるでしょう。

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