古事記でも最初に名前が少し登場する位であり、日本書紀では天常立尊の名前で僅かに登場する程度となります。
天之常立神は独神であり、別天神の中では最後に登場する神となります。
古事記では天之常立神が現れたと思ったら、直ぐに消えてしまい日本書紀でも殆ど存在感がありません。
その為、天之常立神の名前は記載されていますが、かなり謎が深い神様だと言えるでしょう。
尚、天之常立神が祀られている代表的な神社は最後部に記載してあります。
天地開闢
古事記の記述
古事記の世界では天地開闢の時に天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神ら造化三神が最初に登場しました。
その後に、生命の息吹を表しているかの如く、宇摩志阿斯訶備比古遅神が登場し下記の記述が存在します。
※古事記より
次に天が定まり天之常立神。
これが古事記における天之常立神の最初で最後の記述となります。
天之常立神の名前に「天」の文字が入っており「天が定まった」と記載されている事から、天上界と関係が深い神様だという事が分かります。
しかし、天之常立神の古事記での記述はここまでであり、宇摩志阿斯訶備比古遅神と共に独神であったと書かれてはいますが、姿を隠してしまいました。
古事記の天之常立神の記録はこれしかありませんが、天地開闢の時に現れた特別な神様という事で「別天神」に数えられています。
日本書紀の記述
天之常立神は日本書紀では本文には登場せず、異説として一書第六で登場しています。
日本書紀の一書第六によれば、天地がまだ固まっていない時に、世界は海に浮かんだ雲の根が無い様に漂っていたとあります。
こうした時に葦の芽の様なものから誕生したのが、天之常立神だと言います。
次に誕生したのが、宇摩志阿斯訶備比古遅神でした。
古事記では宇摩志阿斯訶備比古遅神が天之常立神よりも早く登場しますが、日本書紀だと登場が逆になっています。
この後に、神世七代の筆頭である国之常立神が登場する流れとなっています。
天之常立神は日本書紀でも、ここでしか登場せず、かなり謎が多いと言えるでしょう。
天之常立神はどの様な神なのか?
天之常立神ですが、古事記や日本書紀の記述を見る限りでは、どの様な神様なのかイマイチ分かりません。
ただし、天が定まった時に誕生したのが、天之常立神であり神々が暮らす高天原の創造神だったのではないか?とも考えられています。
天之常立神の次に登場するのが神世七代の国之常立神となります。
天之常立神と国之常立神の名は「天」と「国」の文字を除けば全て同じです。
それを考えれば、天之常立神と国之常立神は対になっていると言えるでしょう。
日本書紀の本文を読むと一番最初に登場した神が、国常立尊(国之常立神)となっています。
この事から、最初に国之常立神が考えだされ、後から天之常立神が創造されたのではないか?ともされているわけです。
尚、造化三神の天之御中主神にも「天」の文字が入っていますが、先代旧事本紀では天之常立神と同一神ではないか?とも考えられています。
ただし、個人的な解釈としては天之御中主神は宇宙の中心であり、天之常立神は神々が暮らす高天原の守護神だったと感じています。
天之常立神は余りにも描写や説明が少なすぎて、想像による部分が極めて多いと言えるでしょう。
天之常立神が祀られている神社
天之常立神は逸話が殆どないせいか、祀られている神社は極めて少ないです。
意外に思うかも知れませんが、大国主が祀られている出雲大社に天之常立神が祀られています。
出雲大社は全国の神が集まって来るともされており、万物の創造神である天之常立神も祀られる様になったのかも知れません。