足名椎命は、クシナダヒメの父親として知られている人物です。
日本書紀では脚摩乳の名前で登場し、妻の手名椎命も手摩乳と呼ばれています。
足名椎命は大山津見神の子を名乗った話があり、それが真実であればイザナギとイザナミの孫という事になります。
足名椎命の妻は、手名椎命であり老夫婦で「手足」となっているのは、面白い様に感じました。
尚、足名椎命は八岐大蛇により7人の娘が殺害されてしまいますが、最後に残ったクシナダヒメがスサノオと結ばれています。
スサノオの子孫が出雲王朝として続いたと考えれば、足名椎命は日本で最初の外戚と見る事も出来ると感じています。
それを考えれば、元祖藤原氏と呼べるのかも知れません。
今回はクシナダヒメの父親で、スサノオから稲田宮主須賀之八耳神の名を賜わった足名椎命の解説を行います。
因みに、トップの画像は足名椎命が祀られている長野県諏訪市の足長神社です。
スサノオとの出会い
足名椎命と手名椎命は、八岐大蛇がやってきて最後の娘であるクシナダヒメも食べられてしまうと思い涙を流していました。
そこに、高天原を追放されたスサノオがやってきたわけです。
スサノオは何故泣いているのか?と尋ねますが、足名椎命は次の様に答えています。
「私の娘は元々は8人いました。
それが高志国から八岐大蛇なる化け物がやってきて、娘を食べてしまったのです。
八岐大蛇がやってくる季節が、正にこの時であり、それ故に涙を流していました。」
足名椎命はスサノオに窮状を訴えたわけです。
これに対し、スサノオはクシナダヒメを嫁にくれる事を条件に、八岐大蛇を退治する事に名乗り出ています。
スサノオがクシナダヒメを嫁に貰うのに、クシナダヒメ本人の意志ではなく、足名椎命に決定権がある事は現代との結婚観の違いとも言えるでしょう。
足名椎命の天秤
八岐大蛇ですが、神話の中では化け物として描かれています。
実際の八岐大蛇は越国(高志国)からの侵入者だとも、出雲を牛耳っていた8人の部族だったとも、斐伊川の氾濫だったなど説があります。
しかし、足名椎命にとってみれば困っている事は事実であり、悩みを解決してくれるのであれば、クシナダヒメを嫁にやっても問題ないと思ったはずです。
足名椎命は自分の娘の命と天秤にかけた時に、自分の娘の命が大事だと判断し、スサノオに賭けた様に思いました。
スサノオが八岐大蛇を退治するのは、ギャンブル的な要素もあった事でしょう。
しかし、足名椎命は賭けに勝利し、スサノオは八岐大蛇を退治してしまったわけです。
稲田宮主須賀之八耳神
スサノオが八岐大蛇を倒すと、自らが住む宮殿を建てるべき土地を探す事になりました。
スサノオは宮殿を建てるべき土地を須賀に定めると、足名椎命を呼び出して、次の様に述べています。
スサノオ「其方を宮殿の執事に任命する。稲田宮主須賀之八耳神と名乗るがよい。」
これにより、足名椎命は稲田宮主須賀之八耳神と命名されたわけです。
スサノオは高天原を追放されてとはいえ、イザナキの子で天照大神や月読命らと三貴士に名を連ねており、稲田宮主須賀之八耳神の名を貰うのは非常に名誉だった事でしょう。
足名椎命は娘の美貌もあり、出世コースに乗ったとも言えます。
足名椎命が外戚の先駆けだった!?
スサノオとクシナダヒメは、まぐわいを行い八島士奴美神を生みました。
八島士奴美神が出雲の二代目の統治者とも考えられており、日本で最初の世襲王朝が出雲王朝だとする説があります。
それを考えると、足名椎命は出雲王朝の外戚となるはずです。
古事記によれば、八島士奴美神は大山津見神の娘と結婚した記述があります。
足名椎命は大山津見神の子を名乗っており、八島士奴美神は足名椎命の姉妹と結婚した事になるでしょう。
もちろん、この辺りは神話なので分からない部分も多いのですが、場合によっては足名椎命が日本で最初に外戚として権力を握った人物だった可能性もあるはずです。
足名椎命と神社
足長神社
足長神社は長野県の諏訪市にあります。
諏訪と言えば、諏訪大社があり出雲の国譲りの時に、建御雷神に追われた建御名方神が祀られている地でもあります。
諏訪には足名椎命を祀った足長神社だけではなく、配偶者の手名椎命を祀った手長神社もあります。
尚、手長神社に関してはホームページがありましたが、足長神社に関しては専用のサイトを見つける事が出来ませんでした。
足長神社に関しては、代わりにウィキペディアのリンクを貼っておきます。
足長神社(wiki) | 〒392-0012 長野県諏訪市四賀普門寺 | |
手長神社 | 〒392-0003 長野県諏訪市上諏訪9556 | 電話0266-52-1007 |
須佐神社(出雲)
スサノオを中心に祭ってある須佐神社(出雲)に、足名椎命も一緒に祀られています。
尚、須佐神社にはスサノオ、クシナダヒメ、足名椎命、手名椎命と八岐大蛇と関連する神々が祀られているのが特徴です。
古事記や日本書紀における八岐大蛇を退治する話が好きな方であれば、行ってみるのもよいでしょう。
尚、須佐神社は和歌山県にもありますが、和歌山県の須佐神社では残念ながら足名椎命は祀られてはいません。
須佐神社 | 〒693-0503 島根県出雲市佐田町須佐730 | 電話0853-84-0605 |