オオカムヅミノミコトはイザナギが黄泉の国から葦原中国に逃げ帰る時に、見つけた桃です。
オオカムヅミノミコトは黄泉比良坂になっていた桃であり、イザナギが黄泉の国の軍隊に投げつけると、黄泉の国の軍隊は退散しました。
イザナギは桃に感謝し「オオカムヅミノミコト」の名前を付けたわけです。
ただし、オオカムヅミノミコトは自分の意思で黄泉の国の軍隊に飛んで行ったわけではなく、イザナギが投げた事で効力を発揮しました。
これを考えると、オオカムヅミノミコトは神とは少し違う様にも感じています。
しかし、オオカムヅミノミコトが神として祀られている神社もあり、それらを考慮すれば神だと言えるでしょう。
古事記ではイザナギは桃にオオカムヅミノミコトと名付けた話を掲載していますが、日本書紀では桃を投げただけであり、オオカムヅミノミコトの名を命名した話はカットしたりもされています。
尚、オオカムヅミノミコトは桃太郎だったのではないか?とする説も存在している状態です。
桃太郎神社にはオオカムヅミノミコトが祀られています。
黄泉比良坂の桃の木
イザナギは亡くなったイザナミを忘れる事が出来ずに黄泉の国までやってきました。
しかし、イザナギはイザナミが「自分の姿を見ないでください」と言ったにも関わらず見てしまいます。
イザナギは変わり果てたイザナミの姿を見て驚き逃げ出しますが、イザナミやヨモツシコメや雷神、黄泉の国の軍隊に追わせています。
イザナギは何とか黄泉比良坂まで来ますが、ここに桃がなっている事に気が付きます。
この桃こそがイザナギを救いオオカムヅミノミコトと呼ばれる桃となります。
桃の木からイザナギは3つの桃を取り黄泉の国の軍隊に投げつけました。
すると黄泉の国の軍隊は退散しイザナミだけが残ったわけです。
イザナギは桃に感謝し、次の様に述べました。
イザナギ「桃の実よ。感謝致す。私を助けてくれた様に、葦原中国に生きる青人草の、苦しみや悩みを助けてやってくれ。
桃には大きな霊力がある。其方に「オオカムヅミノミコト」という名を賜う事に致す」
これにより桃にオオカムヅミノミコトという名前がつく事になったわけです。
オオカムヅミノミコトが黄泉の国の軍隊を退散させるとイザナギは地上に脱出し、千引きの岩で黄泉の国の入り口を塞いでいます。
この後にイザナギとイザナミは口論を行い日本書紀では菊理媛と泉守道者が仲に入りイザナギはその場を立ち去りました。
オオカムヅミノミコトが日本神話で登場するシーンはここだけであり、後に大国主とスサノオの話でも黄泉比良坂を通りますが、オオカムヅミノミコトは登場しないわけです。
桃の霊力
イザナギは自分を救った桃に「オオカムヅミノミコト」という名前を付けています。
桃は古代より尊ばれ女性器を思わせる所から、命の源だとする話もあり、不思議な力が備わっているとも考えられていました。
日本神話に桃が登場し黄泉の国の軍隊を撤退させたのは、桃に霊力があると日本人が感じていたからなのでしょう。
大和王権の本拠地になった事があり、垂仁天皇の時代に大発展した奈良県桜井市の纏向遺跡から、大量に桃の種が出た事で話題になっています。
桃太郎の本名は、意富加牟豆美命(オオカムヅミノミコト)であり、イザナキを助けたのは、桃太郎だとする説もある様です。
イザナギはオオカムヅミノミコトに「葦原中国に生きる青人草」を救ってやって欲しいと願っています。
青人草は日本人の事であり、神話の時代から桃は日本人を救ってくれる有難い存在でもあったのでしょう。
オオカムヅミノミコトを祀る神社