名前 | 漁夫の利 |
読み方 | ぎょふのり |
出典 | 戦国策 |
意味 | 無関係な第三者が利益を得る事 |
漁夫の利は戦国策にある話で蘇代が趙の恵文王を説得する為に使った例えです。
漁夫の利の意味は「無関係な第三者が利益得る」事を指します。
漁夫というのは「漁師のおじさん」程度の意味であり、漁師の事だと思えばよいでしょう。
漁夫の利のあらすじを簡単に説明すればハマグリとシギが争い、偶然通りかかった漁師に両者とも捕獲された内容となります。
尚、史記に春申君が秦の昭王を説得する為に、秦と楚が争えば犬程度の実力しかない韓や魏を利するだけと説いた話があり、秦と楚が虎になってはいますが、言いたい事は漁夫の利の話に近いと言えるでしょう。
今回は漁夫の利の名前の由来や意味、あらすじなどを解説します。
因みに「虎の威を借る狐」「枕を高くして寝る」「隗より始めよ」などの言葉も、漁夫の利の話と同様に戦国策から出た諺となっています。
漁夫の利の由来
漁夫の利の背景
(画像は紀元前287年頃の勢力図:YouTube)
漁夫の利の由来ですが、戦国策の燕策で蘇代が趙の恵文王を説得した内容から来ています。
こうした中で趙が燕を討とうとしているという情報を燕がキャッチする事になります。
そこで蘇代が燕の為に趙の恵王の説得に向かいました。
ここで蘇代が趙の恵王に説いた言葉が漁夫の利の由来となっています。
漁夫の利のことわざ
蘇代は趙の恵文王の前まで行き易水を渡って燕から趙に来たと告げました。
蘇代は易水の畔でハマグリが干潟で休んでいたところ、シギが飛んできてハマグリをつばもうとしたと言います。
ハマグリもシギに食べられる訳にはいかず、反射的にシギのクチバシをはさみました。
ここでハマグリとシギの戦いとなりますが、この時に漁師(漁夫)が通りかかります。
ハマグリとシギは戦いに夢中であり、漁師に気が付かず、漁師は一気にハマグリとシギの両方を捕えてしまったわけです。
蘇代はハマグリとシギの戦いを燕と趙の戦いに見立て、漁師である秦を利するだけだと諭しました。
漁師こそが漁夫であり、漁夫の利とする諺が生まれる事になります。
漁夫の利の意味
漁夫の利の意味ですが、争っている当事者ではなく第三者が利益を得る事を言います。
繰り返しますが、蘇代の話の中のシギとハマグリが燕と趙であり、燕と趙が争えば秦が攻めて来るから、秦を利するだけだと説いた事になります。
尚、戦国策では蘇代の漁夫の利の話を聞いた趙の恵文王は「なるほど」と言い燕への攻撃を取りやめたと記録されています。
蘇代は漁夫の利の話を使い趙の燕への侵攻を諦めさせ任務を果たしたと言えるでしょう。
漁夫の利は本当にあった話なのか
漁夫の利の話では、蘇代が易水の畔でハマグリとシギが争っているのを見た事になっていますが、実際に蘇代がハマグリとシギが争っている所をみたわけではないでしょう。
あくまでも蘇代が趙の恵文王を説得する為の言葉だと考えられます。
さらに言えば、戦国策は物語としては面白いが説話が多いと考えられており、蘇代が趙に行き恵文王を本当に説得したのか分からない部分もあります。
実際に戦国策にも、漁夫の利の話が何年の事なのか記録されていません。
しかし、創作の話だったとしても故事成語の内容としては面白く現代でも使えそうな話だと言えるでしょう。
秦は漁夫の利で利益を得ていたい
史記の趙の孝成王の18年(紀元前248年)に趙の廉頗が魏を助けて燕を攻撃し、秦の蒙驁が趙を攻撃し37城を抜いた話があります。
この記述を考えると趙の廉頗が燕を攻撃している隙に、秦の蒙驁が趙の37もの城を抜いた事になり、秦が漁夫の利を得たと言えるでしょう。
さらに、史記と韓非子の記述を合わせて考えると、紀元前236年に趙の龐煖が燕を攻撃している隙に、秦の王翦、楊端和、桓齮が鄴攻めを行っています。
燕にいた龐煖は鄴を救う為に急いで軍を南下させますが、間に合わず鄴は陥落しました。
鄴の戦いも燕と趙が争い秦が利益を得ているので、漁夫の利だと言えるでしょう。
漁夫の利の話が本当にあったのかは不明ですが、趙は燕と争い何度か秦に利益を与えているわけです。
当時は通信技術が発展しておらず仕方がない部分もありますが、趙の首脳部は漁夫の利の話が頭に入っていなかったのかも知れません。