天岩戸は日本神話にある天照大神が引き籠ってしまった事件となります。
天照大神が天岩戸に引き籠ってしまった事で、世界は闇に包まれ大混乱となりました。
神々は天安河原に集まりオモイカネノカミを中心に作戦を立てる事になります。
アメノウズメが踊ったりアメノタヂカラオが怪力を使って天岩戸を塞ぐ岩をどかすなどもあり、天照大神は無事に外に出ました。
天岩戸から天照大神が外に出た事で太陽が再び昇り、世界は平和を取り戻しました。
天岩戸神話で三種の神器のうちの二つである八咫鏡と八尺瓊勾玉が誕生しており、日本神話における重要な場面となっています。
日本神話は現代とも繋がっており、天岩戸が実在したとする場所が実在しています。
天岩戸で一番有名なのは高千穂の天岩戸神社ですが、不気味な場所であり「怖い」「気味が悪い」「気持ち悪い」などの意見も多いです。
今回は天戸岩戸神話の伝説を分かりやすく、あらすじで解説します。
スサノオの狼藉
天照大神と誓約をした後にスサノオは高天原に残りますが、数々の狼藉を行いました。
スサノオの行動に神々は問題視しますが、天照大神はわざと良い風に解釈をしてスサノオを咎めなかったわけです。
しかし、スサノオの狼藉は留まるところを知らずに、遂には機織女が怪我により亡くなってしまう事態にまでなります。
天照大神は機織女の死が引き金となり、天岩戸に籠る事になります。
天岩戸に天照大神が籠った事で「日本のひきこもり第一号」ともされてしまうわけです。
尚、日本神話ではスサノオの狼藉で怪我をしたのは、機織女という事になっていますが、実際には天照大神の方だったのではないか?とする説も存在します。
天照大神はスサノオとの誓約以外で子を生んではおらず、天照大神がスサノオの狼藉により怪我をして子供を生めない体になってしまったとする説です。
天照大神が怪我で子供を生めない体になってしまったのであれば、ショックで天岩戸に引き籠ってしまっても不思議ではないでしょう。
ただし、古事記や日本書紀を見ても機織女が亡くなった話はありますが、天照大神が負傷した記述も無く、妄想に過ぎないとみる事も出来ます。
他にも別説として、天照大神の席にスサノオが糞をしてしまい気付かずに、天照大神が座ってしまい天岩戸に籠ったなど、笑い話の様になっている説も存在しています。
日本書紀では異説もありますが、天照大神がスサノオの無法ぶりに心を痛め天岩戸に籠った事だけは同じです。
世界が闇に包まれる
天照大神は太陽神でもあり、天岩戸に隠れてしまった事で、神々が住む高天原も下界である芦原中国も、悉く真っ暗闇になってしまいました。
天照大神が天岩戸に入ると夜の状態がずっと続き、悪い神々が動き出す事になります。
世界は魑魅魍魎が幅を利かせ始め、ハエの羽音の様なおぞましい声が天地に響き、疫病が蔓延し大津波が起こり、台風が吹き荒れるなど日本列島が悲惨な状態となります。
天照大神が天岩戸に籠った事で、スサノオが暴れた時以上の、災厄が起きた話しもある位です。
天照大神が天岩戸に隠れた世界は、ありとあらゆる災厄が、地上と天界に吹き荒れたとも考えらえています。
天照大神は性格的には繊細で、引き籠ってしまう様な女神ですが、天照大神がいないと世界が大変な事になってしまう事が分かるはずです。
天岩戸伝説は何を指すのか?
天岩戸伝説ですが、何かしらの事件を指しているのではないか?とする説があります。
一つの説として天照大神が天岩戸にひきこもったのは、日食や冬至を指すのではないか?とする説があります。
日食は月が太陽の前を横切り隠れる事を指し、日食とする説もあるわけです。
冬至は北半球で最も日光の力が弱まり、万物のパワーが衰えると考えられています。
尚、天変地異が起きる世界中の民族の多くが太陽を祀った話もあります。
因みに、日食と天照大神の話から、邪馬台国の卑弥呼と天照大神の同一人物説も唱える学者もいる状態です。
他にも、スサノオが暴れたのは鬼界カルデラの噴火であり、噴火後の太陽光が遮られる世界を天岩戸だとする説もあります。
神々が集結
天照大神が天岩戸に籠ってしまうと、神々は天安河原に集まり、対応策を話し合う事となります。
この時に、高天原きっての知恵者であるオモイカネノカミ(思金神)を中心にして神々は、天照大神を天岩戸から出す為の作戦を練りました。
作戦の中心となった、オモイカネノカミは、造化三神の二番目の神である、高御産巣日神の子となります。
オモイカネノカミは天変地異を治める為に、次の様な作戦を立てました。
・常世長鳴鳥がニワトリを鳴かせる
・アマツマラを招きイシコリドメが鉄を打ち、アメノヌカドが八咫鏡を造り、玉祖命が八尺瓊勾玉で首飾りを造る。
・骨と木を焼いて占い、榊に取り付け、祝福の祝詞を奉上し、人気者のアメノウズメが躍る。
オモイカネノカミは天岩戸の前でお祭りをし、天照大神が気になって外の様子を見た時に、腕力の神であるアメノタヂカラオが怪力で天岩戸を塞いでいる岩を放り投げる作戦です。
尚、この時に誕生した八咫鏡と八尺瓊勾玉が三種の神器のうちの二つであり、現在でも厳重に保管されています。
八尺瓊勾玉は皇居・宮中三殿にあり、八咫鏡は伊勢神宮に御神体として存在すると考えられています。
八尺瓊勾玉と八咫鏡の名前を見ても、古代日本では、八が縁起が良い数字だとしていたのが分かるはずです。
イザナギとイザナミがオノゴロ島に降り立った時に、八尋殿を建てたり、神武天皇を助けた八咫烏もいる事からも古代日本では8が尊ばれた事は明らかでしょう。
ここで三種の神器のうちの二つが集まりましたが、最後の一つである草薙剣はスサノオが八岐大蛇を倒した時に、天照大神に献上した事で三種の神器が全て揃いました。
尚、三種の神器は現在では天皇であっても見る事が出来ず、存在はかなり謎です。
作戦を実行
天照大神を天岩戸から出す作戦を実行する前に、天児屋命と天太玉命が占いをして八咫鏡と八尺瓊勾玉を取り付けて準備をしました。
さらに、天照大神が天岩戸から出て来る様に祈願した祝詞を唱えさせました。
アメノタヂカラオが天岩戸の付近に隠れ、芸能の神であるアメノウズメが躍り出します。
アメノウズメが服を脱ぎ陰部まで見せて、神々は大盛り上がりとなるや、天照大神は気になり天岩戸を少しだけ開けました。
ひきこもりを強制終了
天照大神が外を覗くとアメノウズメが裸で踊り盛り上がっているのを目にします。
アメノウズメは天照大神を見つけると、すかさず鏡で天照大神の顔を見させました。
鏡に映った自分を見た天照大神は、一瞬たじろぎ動きを止める事になります。
この一瞬の隙にアメノタヂカラオが天岩戸を塞いでいる岩を投げ捨て、天照大神の引きこもりは強勢終了されたわけです。
天照大神が外に出ると世界に太陽が昇り元の世界に戻りました。
天照大神が天岩戸から出て太陽が昇るあたりは、正に太陽神だと言えるでしょう。
尚、天岩戸の前でおこなったお祭りが、日本で最初の祭りだとも考えられています。
天照大神が天岩戸に籠る原因となったスサノオは財産を没収され、爪を剥がれ髭を切られて、高天原を追放されました。
これにより天照大神の天岩戸事件は無事に終了したわけです。
天岩戸は高千穂に実在した
宮崎県の高千穂町は古くから、高天原ではなかったかと言われており、高千穂町に天岩戸が存在しています。
天岩戸の辺りは阿蘇山の火山活動により、溶岩流によって出来た渓谷であり、不思議な景観が創り出されています。
高天原に関しては、実在しない説と、モデルとなった場所がある説で分かれている状態です。
天岩戸も実在しない説もあれば、日本国内の何処かにあったのではないか?とも考えられています。
尚、天岩戸神社は全国に存在していますが、天岩戸の名で商売繁盛や町おこしを狙ったりする場合もあり、日本各地に存在しているとも言えるでしょう。
どこが本当の天岩戸なのかは不明としか言いようがありません。
そもそも天岩戸がある高天原は天の上に存在し、日本列島には無くて当たり前とする説もあります。
日本神話が日本列島で本格的に物語を進めるのは、瓊瓊杵尊が天孫降臨で地上に降り立ってからだと言えます。
有名な天岩戸神社に関しては、記事の最後で記載しておきます。
天岩戸と似た話がギリシア神話にも存在した
アマテラスの天岩戸の話と似た話が、ギリシャ神話にもあります。
豊穣の神デメテルが、娘のペルセポネーをハデスに誘拐されてしまいました。
デメテルはゼウスに助けを求めますが、取り合わなかった事で、デメテルは天界を離れて老婆の姿で、地上を彷徨う事になります。
豊穣の神デメテルが天界を離れた事で、穀物は枯れてしまい大飢饉が発生しました。
神が地上を彷徨った事で大飢饉が発生するのは、何処か天照大神が天岩戸に入った事で世界が闇に包まれたのと似ています。
娘のペルセポネーを奪われて以来、デメテルは何も食べ物を食べませんでしたが、バウボという女性が衣をまくり上げて陰部を見せると、デルメルは笑い食物を食べる様になった話もあります。
股間を見せて食べ物を食べるなどの話は滑稽ではありますが、天岩戸神話で活躍したアメノウズメとも被る部分があるわけです。
後にペルセポネーが冥界から地上に戻ると、デルメルの悲しみは消えて再び地上は光を戻す事となりました。
神話というのは、何処か似ている部分があると言えるでしょう。
天岩戸神社
天岩戸神社は全国にあり、代表的な神社を紹介します。
高千穂に代表される天岩戸ですが、気味が悪い事もあり注意が必要です。