瓊瓊杵尊は日本神話に登場し、天照大神の孫となり「天孫」とも言える立場です。
瓊瓊杵尊は天照大神の意向もあり、地上である高千穂に舞い降りた神でもあります。
イザナギを初代とすれば、4代目となるのが瓊瓊杵尊であり、子孫は皇室にも繋がります。
古事記や日本書紀などは瓊瓊杵尊から地上を舞台にして話しが進む事になり、瓊瓊杵尊が日向三代の初代となります。
瓊瓊杵尊の曾孫が神武天皇であり、皇室とも繋がっている神でもあります。
しかし、瓊瓊杵尊はイワナガヒメを貰っておきながらも、実家に帰らせるなどもしており、神でありながらも永遠の命を失いました。
さらに、木花咲耶姫を妊娠させながらも、認知しないなどの問題行動も目立ち、瓊瓊杵尊は性格を問題視される場合もあります。
一部では瓊瓊杵尊は「クズ」なのではないか?とも考えられているわけです。
尚、古事記や日本書紀は天皇家を讃える為に創ったという専門家もいますが、瓊瓊杵尊の行動が余りにも酷く天皇家を讃える為の書物ではないとも考えられています。
瓊瓊杵尊と天照大神
天照大神はスサノオとの誓約で出来た子である天忍穂耳命に、地上を治めさせようと考えました。
しかし、天忍穂耳命は子供が生まれたと述べ、自らの子である瓊瓊杵尊が地上に行くべきだと天照大神に述べます。
天忍穂耳命と高御産巣日神の娘である栲幡千千姫命の子が瓊瓊杵尊だった事から、天照大神も瓊瓊杵尊を地上に派遣する事に合意しました。
天照大神は瓊瓊杵尊を呼ぶと「豊葦原の水穂の国を統治する為に、地上に降りる様に」と述べ、瓊瓊杵尊が了承する事になります。
これにより天照大神の孫である瓊瓊杵尊による天孫降臨が決定しました。
三種の神器を授けられる
瓊瓊杵尊による地上行が決まると天照大神は三種の神器を授けました。
三種の神器は八咫鏡、八尺瓊勾玉、草薙剣を指します。
天照大神は三種の神器を瓊瓊杵尊に渡し、地上を支配する者の証としたわけです。
天照大神は瓊瓊杵尊に三種の神器の一つである八咫鏡は「自分を祀るのと同じように祀る様にせよ」と述べ、さらに知恵の神である思金神を同行させ、祭事を取り仕切る様に命じました。
天照大神は瓊瓊杵尊の地上行きに天児屋命や布刀玉命、アメノウズメ、天之手力男神らを同行させる事になります。
瓊瓊杵尊は天孫降臨を行いますが、天の八衢で猿田彦に出会いました。
アメノウズメの活躍もあり、猿田彦は瓊瓊杵尊の家来となります。
天孫降臨は無事に成功し、瓊瓊杵尊は高千穂に降り立ちますが、猿田彦が故郷に帰ると述べました。
瓊瓊杵尊は猿田彦がアメノウズメを気に入っている事を知っていたのか、アメノウズメを猿田彦に仕える様に命じています。
ここまでの瓊瓊杵尊は問題なく進みますが、地上に舞い降りてから問題行動が目立つ様になります。
瓊瓊杵尊と木花咲耶姫の出会い
瓊瓊杵尊は笠沙の岬にいた時に、木花咲耶姫と出会いました。
瓊瓊杵尊は一目で木花咲耶姫を気に入り、自分は天津神だと名乗り、いきなり木花咲耶姫に結婚を申し込んだわけです。
木花咲耶姫は出会ったばかりであり、父親である大山津見神の許しを得て欲しいと伝えました。
尚、瓊瓊杵尊は木花咲耶姫に結婚を申し込んだ話もありますが、実際には男女の関係を要求したのではないか?とする説があります。
古代日本では身分の高い男性は、女性に対していきなり肉体関係を要求する事がしばしばあったと考えられているわけです。
それを考えれば、瓊瓊杵尊は木花咲耶姫にまぐわいを要求した事になるでしょう。
瓊瓊杵尊は使者を大山津見神の元に派遣しました。
結婚を決める
瓊瓊杵尊の使者が大山津見神の所に行くと、大山津見神はすこぶる喜びました。
天照大神の直系の孫である瓊瓊杵尊が木花咲耶姫を求めるのは、大山津見神にしてみれば非常に名誉な事でもあったのでしょう。
大山津見神は木花咲耶姫だけではなく、磐長姫も瓊瓊杵尊に嫁がせる事とし、瓊瓊杵尊も了承しました。
これにより木花咲耶姫と磐長姫は瓊瓊杵尊に嫁ぐ事が決まり、多くの結納品を献上し結婚を祝う事にしました。
この時の大山津見神の喜びは大きかったはずです。
永遠の命を失う
瓊瓊杵尊は木花咲耶姫と磐長姫の二姫と結婚しますが、磐長姫の姿を見ると唖然としました。
容貌美しき木花咲耶姫と違い磐長姫は容貌が優れていなかったわけです。
瓊瓊杵尊は木花咲耶姫とだけ結婚し、磐長姫は実家に帰らせてしまいました。
女性を容姿で判断し実家に帰らせてしまったのは、瓊瓊杵尊が嫌われる原因の一つだと言えます。
磐長姫を実家に帰らせてしまった事で、瓊瓊杵尊に不幸が訪れる事になります。
磐長姫は岩の様に「永遠」の象徴であり、木花咲耶姫は華やかさがあり繁栄の象徴でもあったわけです。
大山津見神は瓊瓊杵尊が磐長姫を受け取らなかった事で、神の象徴でもある「永遠の命」を失う事になります。
これまでの神々を見るとイザナミや機織女など怪我により、亡くなってしまう神はいても寿命で亡くなる神はいませんでした。
しかし、瓊瓊杵尊が磐長姫を実家に帰らせてしまった事で、永遠の命という概念が失われました。
歴代天皇の寿命があるのは、瓊瓊杵尊が永遠の命を失ったからだと言う事になっているわけです。
尚、天皇の時代に入ると、垂仁天皇も容貌で女性を判断し、受け取らなかった話があります。
認知しない
後に木花咲耶姫が瓊瓊杵尊との子が誕生したと告げました。
しかし、瓊瓊杵尊は木花咲耶姫とは1回しか男女の関係になっていないと述べ、木花咲耶姫の腹の子は自分の子ではないと告げました。
さらに、瓊瓊杵尊は木花咲耶姫の腹の中にいる子は国津神の子だと述べたわけです。
瓊瓊杵尊の言葉に木花咲耶姫は激怒し、炎の中で出産すると告げます。
木花咲耶姫は天津神の子であるなら炎の中で出産しても、無事に出産出来ると告げました。
木花咲耶姫は燃えさかる建物の中で、見事に火照命、火須勢理命、火遠理命、火明命らを出産しています。
瓊瓊杵尊は木花咲耶姫を妊娠させておいて、認知しないという行動は「最低」とも呼ばれ大きく評判を落とす原因にもなっています。
尚、瓊瓊杵尊と木花咲耶姫の子である火照命が海幸彦であり、火遠理命が山幸彦で皇室とも繋がって行く事になります。
山幸彦の孫が神武天皇であり、ここまで来ると日本神話も終わりが見えてきた感じがするはずです。
因みに、日本書記には別の話もあり、木花咲耶姫が出産した後に、子供を瓊瓊杵尊に見せたら嘲笑い認知せず、怒った木花咲耶姫が炎の中で天津神の子だという事を証明させた話もあります。
瓊瓊杵尊の最後
瓊瓊杵尊ですが、日本書紀には最後の記述があります。
日本書紀によると木花咲耶姫や山幸彦や海幸彦らを出産してから、暫くすると瓊瓊杵尊が御隠れになり筑紫の日向可愛山陵に葬ったとあります。
大山津見神の預言が的中し、瓊瓊杵尊は亡くなってしまったと言えるでしょう。
日本書紀には瓊瓊杵尊の最後の描写は無く可愛山陵に葬られた事だけが記述されています。
古事記には瓊瓊杵尊の最後は描かれていません。
尚、瓊瓊杵尊は日本神話において寿命で亡くなった最初の神様となります。
瓊瓊杵尊は農耕の神様だった
瓊瓊杵尊は意外に思うかも知れませんが、農耕の神様でもあります。
天照大神は瓊瓊杵尊に三種の神器を与えましたが、三種の神器が農耕を関わっているとする説があります。
三種の神器の一つである八咫鏡は鏡であり光を反映し、太陽の光は農耕をする上で欠かせないものです。
草薙剣はスサノオが八岐大蛇を退治して得た宝剣であり、蛇は田の神、水の神と関係が深く水神や龍神にもなり稲作と密接に関わっています。
イザナギは黄泉の国から帰って来ると禊を行い三貴士を誕生させています。
イザナギは三貴士の中で最初に生まれた天照大神に御倉板拳之神を与えました。
イザナギは御倉板拳之神を天照大神に与える事で、高天原の統治を任せたわけです。
三種の神器の中で八尺瓊勾玉が御倉板拳之神の代わりであり、地上を統治する者の証でもあります。
御倉板拳之神は稲種を収納する倉を表し豊穣を表すともされています。
瓊瓊杵尊は三種の神器のお陰で農耕の神にもなっていると言えるでしょう。
他にも、瓊瓊杵尊は意外にも「縁結びの神」にもなっています。
記紀は本当に皇室を賛美する為のものなのか
古事記や日本書紀は、皇室を賛美する為に創られたとも考えられています。
しかし、これまで見てきた様に瓊瓊杵尊の行動が余りにも酷く、聖王としての役割も全く果たしていません。
瓊瓊杵尊の行動は人間性を疑われても仕方がない様にもなっているわけです。
その為、記紀は「伝わっている事をそのまま記録したのではないか」とする説もあります。
勿論、天武天皇などの意向もあり記紀は作られたはずですが、瓊瓊杵尊の性格は聖王像から離れすぎており、皇室を賛美する内容とは思えません。
むしろ、皇室を卑しくするような内容にも見えて来るわけです。
瓊瓊杵尊を祀る神社
名前 | 住所 | 電話番号 |
穂高神社 | 長野県安曇野市穂高6079 | 0263-82-2003 |
高千穂神社 | 宮崎県西臼杵郡高千穂町三田井1037 | 0982-72-2413 |
霧島神宮 | 鹿児島県霧島市霧島田口2608−5 | 0995-57-0001 |
箱根神社 | 神奈川県足柄下郡箱根町元箱根80−1 | 0460-83-7123 |
椿大神社 | 三重県鈴鹿市山本町1871 | 059-371-1515 |
富士山本宮浅間神社 | 静岡県富士宮市 | |
新田神社(鹿児島) | 鹿児島県薩摩川内市宮内町1935−2 | 0996-22-4722 |
国見神社(奈良県) | 奈良県御所市柏原276 | |
越中総鎮守一宮 射水神社 | 富山県高岡市古城1−1 | 0766-22-3104 |
槵觸神社 | 宮崎県西臼杵郡高千穂町三田井713 | 0982-73-1213 |
神内神社 | 三重県南牟婁郡紀宝町神内958 | 0735-33-0334 |
築土神社 | 東京都千代田区九段北1丁目14−21 | 03-3261-3365 |
伊豆山神社 | 静岡県熱海市伊豆山708−1 | 0557-80-3164 |
常陸國總社宮 | 茨城県石岡市総社2丁目8−1 | 0299-22-2233 |