古代日本 日本神話

月読命(ツクヨミ)は記録が少なく祀られている神社も極端に少ない

2022年1月13日

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宮下悠史

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名前月読命、月夜見尊、ツクヨミ
生没年不明
コメント三貴士なのに伝わっている事がほぼ皆無の神様
関連月讀神社、伊勢神宮

月読命は天照大神スサノオと並ぶ三貴士の一人であり、強力な力を持っているとされる神様です。

古事記や日本書紀では、話の食い違いはあれど、夜の国を統治する神様という事で共通しています。

同じ三貴士の天照大神とスサノオに比べると、極端に記録が少なく祀られている神社も少ないと言えます。

月読命の記録が古事記だと、イザナギから生まれた事と夜の国を治める様に命じられた位の話しかありません。

その為、様々な説も出ており、陰謀論まで存在している状態です。

今回は三貴士の一人であり、夜の国の番人とも言える月読命を解説します。

尚、月読命は一般的には男神として扱われていますが、女神だとする説もあります。

三貴士の一人

月読命はイザナギが黄泉の国から帰還した後に、誕生した神様です。

イザナギは黄泉の国で体が穢れてしまったと、を行い最後に清流で顔を洗いますが、この時に月読命が生まれています。

因みに、イザナギの左目からは天照大神が生まれ、月読命が右目から生まれ、スサノオが鼻から生まれました。

天照大神、月読命、スサノオは同時に誕生したわけです。

天照大神、月読命、スサノオは強力なパワーを持って生まれた神であり、誕生した事にイザナギは大きく喜び三貴士としました。

尚、月読命は「月=陰」のイメージから女神だと思っている人も多いようですが、実際には男神なのか女神なのかは明確な記述があるわけではなく分からない状態です。

書かれてなければ男神だったのではないか?と主張する人もいます。

月の神と言えば、かぐや姫が連想される事から女性に思われがちですが、男神の可能性が高いと言えます。

夜の国を治める

月読命は天照大神スサノオと共に生まれますが、イザナギは三貴士にそれぞれ統治するべき場所を与えています。

天照大神には高天原を任せて、スサノオには海原、月読命には夜の食国を任せたと、古事記に記述があります。

「夜の食国」の名前から夜を食べると解釈すればよいでしょう。

夜を食べるとは、「夜を支配する」と考えればよく、月読命は夜の支配者となったわけです。

天照大神が昼の支配者であり、月読命は天照大神と対を為す神だとも言えるでしょう。

古事記によればイザナギに統治を任された三貴士の天照大神と月読命は、任地に向かいますが、スサノオだけが任地の海原に向かわずに泣き叫んだ話があります。

スサノオは根の国にいるイザナミに逢いたくて泣いたとも言われていますが、実際には天照大神と月読命で昼と夜の支配者なのに、スサノオだけが海で待遇が悪いと考えて泣いた説もあります。

天照大神と袂を別つ

日本書紀の話なのですが、天照大神と月読命が同じ場所で暮らしていた話しもあります。

ある時に、月読命は天照大神の命令で、保食神の元に行きました。

月読命は保食神の接待を受ける事となります。

この時に、保食神は体内から食べ物を出して、月読命を接待しました。

しかし、月読命は保食神に不快感を示し、保食神を斬り捨ててしまったわけです。

殺害された保食神の体からは、様々な食べ物が生えて来た話があります。

月読命が保食神を殺害した話は、古事記のスサノオがオオゲツヒメを斬った話と、かなり似ており注目されている状態です。

月読命が保食神を斬った事で、天照大神と月読命は絶縁状態となり、昼と夜が完全に分かれたとされています。。

月読命の謎

存在感が薄すぎる

月読命の謎を幾つか解説します。

月読命は三貴士の一人に数えられる強力な力を持った神にも関わらず、スサノオや天照大神と比べると極端に出番が少ないと言えます。

古事記ではイザナギの右目から生まれた後に、夜の国の統治を任させ、それ以降は一切登場しません。

日本書紀でも、先に述べた様に保食神を殺害した後に出番はありません。

天照大神が後にスサノオの狼藉に嫌気が指し天岩戸に籠った話があります。

この時に、世界は夜の国になってしまったのですが、月読命が夜の国を任されたのであれば、月読命が登場してもおかしくありません。

しかし、古事記にも日本書紀にも、天照大神が天岩戸に籠った時に、月読命が出て来た話もないわけです。

それを考えても、月読命が三貴士の一人に数えられながらも、極端に登場が少ないのは謎と言えるでしょう。

月読命の存在感が薄い事に関しては、後述しますが、陰謀論もあります。

無理やり三貴士の一人にされた説

月読命が無理やり三貴士の、一人に入れられた説があります。

一説によると神話として伝わっていたのは、天照大神とスサノオだけだったとする説です。

しかし、記紀を編集する段階で、中国の「三、五、七、九」と奇数が縁起がよいとする話が入ってきました。

そうなると、天照大神とスサノオの他に、もう一人追加され月読命が考え出されたとする説となります。

同様に、古事記で最初に現れた神である造化三神にも、同じ事が言えると考えられています。

造化三神も元は、高御産巣日神神産巣日神だけであり、無理やり最高神として天之御中主神を入れたとする説となります。

月読命と天之御中主神は、古事記では力を持った神のはずなのに、ほぼ名前だけしか登場しない様な神となっています。

この事から、月読命と天之御中主神は元々の神ではなく、机上の神様だとも考えられています。

天智系皇族の陰謀

陰謀論になってしまうのですが、月読命が古事記で陰が薄いのは、天智系の光仁天皇と取り巻きが原因だとする説があります。

月読命は月の神であり、古代日本では太陰暦が使われており、常識的に考えれば月は古代において重要視されていたとする説です。

しかし、現実的には月読命を祭神としている神社は、100にも満たないと言われています。

同じ三貴士スサノオを祭神とする神社が、8000を超えている事を考えると、差は歴然となるでしょう。

記紀は天武天皇の時代に、編纂が始まったとされています。

天武天皇は占星術に優れていた記録があり、占星台なる原始的な天文台まで設置していた話があります。

この事から分かる様に、天武天皇は星を重視していたわけです。

天武天皇が夜空を重視するのであれば、夜の国を治める神である月読命は尊重されたのではないかと考えられます。

天武天皇が崩御すると持統天皇が即位し、持統天皇の孫にあたる文武天皇、天智天皇の子である元明天皇と続きました。

そこから先は天武系の元正天皇、聖武天皇、孝謙天皇、淳仁天皇、称徳天皇(孝謙天皇)と続くが、道鏡を寵愛するなど皇室の危機が訪れます。

称徳天皇は子を残さず、天智系の光仁天皇が即位しました。

天武系の天皇が長く続いた事で、天智系の貴族は長く冷遇され、光仁天皇が即位したと同時に反撃を企てたとする説です。

光仁天皇の取り巻きらは、天武系を嫌い天武天皇が夜の月を重視していた事から、歴史を抹殺しようと画策しました。

これにより、夜の国の神であるツクヨミの記録も抹殺されたとする説となります。

桓武天皇は794年に平安京に遷都していますが、天武系勢力を嫌い遷都した説もあります。。

ただし、これらに関しては、あくまでも想像であり、明確な根拠はなく真実は不明と言わざるを得ないでしょう。

現段階では陰謀論の一つにしか過ぎない状態です。

万葉集と月読命

奈良時代に残された歌集である万葉集に、月読命が登場する歌があります。

天橋も 長くもがも 高山も 高くもがも 月夜見の 持てるをち水 い取り来て 君に奉りて をち得てしかも

歌の意味は「長い天への橋があるといい、高い山があるといい、そうしたら「ツクヨミ」が持っている「をち水」を取って来て、君に奉るのに」です。

ここでいう「をち水」は若返りの水であり、月には若返りの水があると考えられていました。

尚、竹取物語のかぐや姫は月の都の人であり、月に帰る時に帝に不死の薬を献上した話があります。。

日本では月の神話は少ないですが、古代の人々が月に対してのイメージを想像する事が出来るはずです。

月読命が祀られている神社

伊勢神宮

月読命は伊勢神宮に祀られています。

伊勢神宮には内宮の別宮として月讀宮があり、外宮の別宮には月夜見宮がある事で知られています。

別宮は伊勢神宮の最も重要な社の正宮に次ぐ、重要な社であり内宮に十カ所、外宮に四カ所存在しています。。

日本書紀では天照大神と月読命に二度と会わないとした話がありますが、伊勢神宮で一緒に祀られている不思議な現象が起きている状態です。

伊勢神宮

月讀神社

長崎県壱岐市葦辺に月讀神社(月読神社)があります。

月夜見命、月弓命、月読命の三柱が祀られており、読み方は全て「ツクヨミノミコト」です。

月讀神社では航海の安全などの安全にかかわるご利益があると言われています。

月讀神社は探せば、全国にあるので行ってみるのも良いでしょう。

月讀神社(壱岐)

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