名前 | 保食神(うけもちのかみ) |
性別 | 女神だと考えられている |
登場 | 日本書紀 |
コメント | 口から食べ物を出せる神様 |
画像 | 竹駒神社 |
保食神は日本書紀に登場する神様です。
日本書紀には異伝が多く採用されていますが、第五段の十一の一書で保食神と月読命の話が掲載されています。
保食神は女神とするのが一般的です。
保食神は月読命に殺害されてしまいますが、遺体から馬や牛、穀物などが産まれました。
保食神は古事記には登場しませんが、似ている神様としてオオゲツヒメがおり同一人物とも考えられています。
保食神は日本書紀における五穀豊穣の女神だと言えるでしょう。
尚、保食神を祀っている神社に関しては、最後に記載してあります。
保食神と月読命
高天原にいた天照大神は月読命に、地上にいる保食神を見て来るように命じました。
月読命は地上の保食神の元に出向くと、保食神は月読命を接待したわけです。
この時に、保食神は口からご飯や海産物など多くの御馳走を出し、月読命を持て成します。
しかし、月読命の感覚では、保食神の口から出た食べ物は汚らしいと感じたのか、次の言葉を発しました。
月読命「何という汚らわしく卑しい行為じゃ。口から出した者を儂に食べさせようとするとは何事であるか」
月読命は言葉を吐き捨てると、保食神を殺害してしまいました。
これにより、保食神は命を落とす事になったわけです。
月読命が保食神を斬り殺したと知った天照大神は、月読命とは二度と会いたくないと言い絶縁しています。
太陽神である天照大神と月読命が絶縁した事で、世界は昼と夜に別れたと言います。
尚、天照大神と月読命が絶縁したのが、日本書紀における月読命の最後の記述となっています。
食べ物が産まれる
天照大神と月読命は絶縁しますが、天照大神は亡くなった保食神の様子を、天熊人に見に行かせました。
天熊人が屍となった保食神を見ると、頭からは牛馬、額からは粟、眉の上に蚕、目の上に稗、腹の中に稲、陰部に麦、大豆、小豆が産まれていました。
天熊人は保食神から出て来た作物を、高天原に持ち帰ります。
天熊人が保食神から生まれた作物を天照大神に届けると、天照大神は「これこそは民の食物である」と述べています。
天照大神の言葉からは、満足感も伝わってくる様にも感じます。
天照大神は麦、粟、稗、豆を畑の種子とし、稲を水田の種子としました。
保食神から出て来た稲を高天原の水田に植えると、八握程にも大きくなり、収穫する事が出来たわけです。
さらに、口に繭を含み糸で紡ぐ事を始め、これが養蚕の始まりだとも言われています。
天照大神は保食神の死で、月読命と縁を切る事になりましたが、恩恵も受けたとも言えるでしょう。
オオゲツヒメと保食神
日本神話を知る上で重要な手掛かりは、日本書紀の他にも古事記があります。
古事記では保食神は一切登場せずに、代わりにオオゲツヒメの話が記録されています。
オオゲツヒメは保食神と同様に、体の鼻や耳、お尻、陰部などの穴から食べ物を出す能力を持っていました。
オオゲツヒメは体の穴から食べ物を出すのですが、乱暴者のスサノオに見られてしまい殺害されています。
殺害されたオオゲツヒメの体からは、五穀が産まれた話があり、オオゲツヒメの遺体から造化三神の神産巣日神が種を摂取した事になっています。
オオゲツヒメと保食神の話は大体が同じですが、殺害した人物が三貴士の月読命とスサノオに別れています。
なぜ、スサノオと月読命に別れて話が記載されたのかは不明であり、元の話はスサノオもしくは月読命のどちらかの話が伝わっていたのではないか?とする説もあります。
尚、日本書紀と古事記における保食神とオオゲツヒメの亡くなった後に、出て来た食物の違いは下記で比較しました。
パーツ | 保食神 | オオゲツヒメ |
頭 | 牛、馬 | 蚕 |
額 | 粟 | ー |
眉 | 蚕 | ー |
耳 | ー | 粟 |
目 | 稗 | 稲の種 |
鼻 | ー | 小豆 |
お腹 | 稲 | ー |
尻 | ー | 大豆 |
陰部 | 麦、小豆、大豆 | 麦 |
図を見ると保食神とオオゲツヒメで、出て来た部位と食物の違いがある事が分かるはずです。
さらに言えば、日本書紀では牛や馬などの畜産関係も誕生している事が分かります。
保食神とオオゲツヒメの遺体から、採取された作物の違いが出ている理由は、よく分かってはいません。
尚、遺体から食物が産まれる話は、インドネシアの神話にもあり「ハイヌウェレ型神話」とも呼ばれています。
保食神が祀られている神社
保食神が祀られている主な神社です。
保食神には五穀豊穣、養蚕守護、産業繁栄などの御利益があるともされています。
尚、保食神は宇迦之御魂神とも同一視され、稲荷神社に祀られていたりもします。