名前 | 八岐大蛇(ヤマタノオロチ) |
登場 | 古事記、日本書紀、神話 |
生没年 | 不明 |
コメント | 化け物だと伝わっているが、正体は斐伊川説、8つの部族説、越国説などがある |
画像 | ドラクエ3 やまたのおろち |
八岐大蛇は古事記や日本書紀などに登場する化け物です。
スサノオが退治した事でも有名であり、八岐大蛇を退治した時に尾から出て来た草薙剣が、三種の神器の一つになっています。
八岐大蛇は神話の中では怪物という扱いになっています。
しかし、八岐大蛇の正体は斐伊川だったのではないか?とする説や、出雲の鉄を牛耳る8つの部族だったとする説もあります。
他にも、越国からの侵略者など様々な説がある状態です。
今回は古事記や日本書紀における八岐大蛇を解説し、八岐大蛇の正体を見定めて行きます。
尚、上記はスクエニアエニックスの人気ゲームであるドラクエ3のやまたのおろちの画像です。
ドラクエ3の中ではジパングに行くと「ヒミコ」なる女性がおり、正体が「やまたのおろち」となっています。
しかし、日本神話や魏志倭人伝を見ても、卑弥呼の正体が八岐大蛇だったとする記述は存在しません。
ドラクエのひみこを八岐大蛇にした設定は、ストーリーを面白くする為の要素だと言えるでしょう。
神話の中の八岐大蛇
恐ろしい化け物
スサノオは高天原で狼藉を働き、天照大神が天岩戸に引き籠る事件が起き、後に追放されています。
高天原を追放されたスサノオが出雲の鳥髪に舞い降りると、泣いている老夫婦と娘に会う事になったわけです。
娘の父親は自分が大山津見神の子で足名椎命と名乗り、妻の名前は手名椎命だと言い娘の名はクシナダヒメだと述べました。
この時に足名椎命はスサノオに、自分達には8人の娘がいたが高志国から来た八岐大蛇により、7人が食べられてしまったと言います。
さらに、足名椎命は八岐大蛇の容貌を次の様に伝えました。
足名椎命「目はほおずきの様に真っ赤で、一つの胴体に八つの頭と八つの尻尾を持ち、体からは檜や杉が生えております。
長さは八つの峠と谷に渡り、腹はいつも一面に血が滲んでいる化け物でございます。」
足名椎命の言葉からは八岐大蛇が如何に、化け物かと言う事が分かるはずです。
尚、足名椎命の言葉に「長さは八つの峠と谷に渡り」とあり、とてつもなく大きな怪物だと言う事も分かります。
普通で考えれば八岐大蛇は、並みの化け物ではないと言えるでしょう。
八岐大蛇を退治
スサノオは神と言えど、正面から戦って八岐大蛇に勝つ事は出来ないと判断したはずです。
一つの説としては、高天原から追放された時に、神の能力を失ってしまったとする説もあります。
スサノオは足名椎命と手名椎命に門を造る様に命じ、台の上に強い酒を置いておく様に命じました。
足名椎命と手名椎命が言われた通りに行うと、八岐大蛇が突風と共にやってくる事になります。
八岐大蛇は8つの首を門の中に突っ込み用意してあった、度数の強い酒を飲み干すと泥酔して寝てしまいました。
この時にスサノオは持っていた十拳剣で八岐大蛇の首を斬り、胴体もバラバラに切り刻みました。
さらに、スサノオは八岐大蛇の尾も斬ろうとしますが、十拳剣が壊れてしまいます。
スサノオは八岐大蛇の尻尾を見ると、見事な剣が出て来ました。
これが草薙剣であり、スサノオは天照大神に草薙剣を献上しました。
これにより、天照大神の元に八尺瓊勾玉、八咫鏡、草薙剣と三種の神器が揃う事になります。
八岐大蛇を退治したスサノオは英雄となり、クシナダヒメと結婚し、須賀を拠点としました。
スサノオとクシナダヒメはまぐわいを行い、スサノオの子孫により出雲は発展していく事となります。
スサノオの6代後の子孫として大国主が誕生した話があります。
スサノオは八岐大蛇を退治しクシナダヒメと結ばれた事で、スサノオを主人公とした物語は終わり、大国主を主人公とした物語に移る事になります。
八岐大蛇の正体
八岐大蛇の正体に関するアンケート
八岐大蛇の動画を作ったのですが、その時に八岐大蛇の正体に関するアンケートを取ってみました。
上記の内容から分かる事は、八岐大蛇の正体が出雲を支配していた、8つの部族の長を指すと半分近くの方が考えている点です。
次に続くのが斐伊川の氾濫を八岐大蛇に見立てたとする説であり、越国からの侵略は突然変異した蛇にも満たない数でした。
ここでは、斐伊川、出雲の部族、越地方からの侵略者説を取り上げたいと思います。
ただし、八岐大蛇の正体が何だったのか?は邪馬台国論争と同じように多数決で決める事は出来ません。
その為、人数が多かった出雲の八つの部族が必ずしも正解とは限らないでしょう。
出雲にいた8つの部族説
八岐大蛇の正体は出雲にいた8つの部族だったとする説があります。
出雲は鉄の産地であり「たたら製鉄」などで有名な地域です。
八岐大蛇の正体が出雲にいた8つの部族説では、8つの部族がたたら製鉄の技術を独占していたと考えた説となります。
精鉄技術を持っていた8つの部族の長らは、女狩りなども行っており、農家の娘であるクシナダヒメもターゲットになります。
この時に、スサノオが現れて8つの部族の長達を酒宴に招き、酔った所で暗殺しました。
スサノオは8人の部族長を倒した事で、精鉄技術を手に入れたとも考えられるはずです。
八岐大蛇の正体が八つの部族説では、スサノオは出雲への侵略者だったのではないか?とも考えられています。
さらに言えば、日本書紀にスサノオが出雲の鳥髪に来る前に、新羅に舞い降りた話しもあり、スサノオが朝鮮から出雲を侵略したとする説もあります。
斐伊川の氾濫説
八岐大蛇の正体が斐伊川の氾濫だったとする説があります。
上記が斐伊川の画像なのですが、見方によっては八岐大蛇を連想する事が出来るはずです。
斐伊川は暴れ川であり、何度も反乱を起こし村人を悩ませていました。
村では斐伊川の氾濫を神の怒りと考えて、生贄などを捧げていたとも考えられています。
クシナダヒメも斐伊川の人柱にされる所でしたが、スサノオが現れて治水事業を行い、斐伊川の氾濫を抑え込む事に成功しました。
尚、クシナダヒメは日本書紀では奇稲田姫と書かれる記述も見られます。
奇稲田姫には「稲」の文字が入っており、水田を作ったスサノオと稲のクシナダヒメが交わり、稲作が始まったとも考えられています。
また、別の説ではスサノオがオオゲツヒメを殺害した時に、穀物の種を手に入れており、水田の穀物の種を植えたともされています。
これらの話は、暴れ川である斐伊川の灌漑工事を成功させたスサノオが、八岐大蛇を倒したとする伝説となった話しでもあるわけです。
世界の神話の中には、治水事業を成功させた事で英雄となった人物も多くいます。
中国では夏王朝の始祖となった禹は、治水事業を成功させた功績により帝位に就いた記録もあります。
世界中で洪水伝説もあり、灌漑工事の重要度は高かった事は間違いないでしょう。
因みに、スサノオが治水工事を成功させて英雄になったのであれば、スサノオは古事記の様な乱暴者ではなく、インテリとなるはずです。
越国からの侵略者
神話によれば八岐大蛇は高志国が来たとする記述があります。
高志は「こし」と読み、越国(こしのくに)を指すとする説です。
越国は聞きなれない言葉に感じるかも知れませんが、北陸地方を指す言葉となります。
後に越国は越前、越中、越後、加賀、能登に分割される事になりました。
日本海側の地域は朝鮮半島や中国大陸とも、深く結びついていた話があります。
敦賀港は古来より発展していた話しがあり、出雲とはライバル関係にあったのではないか?とも考えられています。
越国には強力な力を持った勢力がおり、それが八岐大蛇だとする説もあります。
それを考えると、越国からの侵攻をスサノオが戦いで破った事で、英雄になったとも考えられるわけです。
スサノオの子孫である大国主の時代に、大国主が高志国からヌナカワヒメを嫁に貰ったとする話があります。
この事から、八岐大蛇がスサノオに敗れた事で、越国は劣勢となり、出雲と攻守が逆転したとも考えられています。
八岐大蛇と世界の伝説
ヒドラ
世界の神話の中にも八岐大蛇に似ている化け物は存在します。
その代表格がギリシャ神話に、登場するヒドラだと言ってもよいでしょう。
ヒドラは八岐大蛇を超える9つに首を持ち、そのうち8つの首は再生が可能となっています。
8つの首は斬られると倍の数になり蘇る事が可能であり、首の数はどんどん多くなっていくわけです。
八岐大蛇が首を斬られてしまうと再生しなかったのに対し、ヒドラは再生する分だけ八岐大蛇よりも強力だと言えます。
さらに、1本の首は不死身であり猛毒を吐けるなど、強さで言えば八岐大蛇を圧倒している様にも見えます。
しかし、ヒドラはヘラクレスに斬られた首を焼かれてしまい再生が出来なくなり、残った不死身の首は巨大な岩の下敷きにして破りました。
ドラゴンと美女
八岐大蛇は蛇ですが、見方によってはドラゴンにも見えるはずです。
英雄が竜を倒す話は世界の神話にあり、北欧神話ではファフニールというドラゴンを、英雄シグルズが魔剣グラムで打倒しています。
ギリシャ神話でもヘラクレスが、黄金の林檎を守るラードーンというドラゴンを倒しました。
怪物と美女をセットにした話では、ギリシャ神話でペルセウスは、怪物ケートスの生贄にされそうになった、エチオピア王女アンドロメダを救出しています。
因みに、ケートスは犬の頭に魚の下半身を持つ化け物であり、ドラゴンではありません。
八岐大蛇も恐ろしい怪物であり、怪物と神話は深く関わっている様に感じます。
安徳天皇と八岐大蛇
源平合戦のクライマックスで僅か6歳の安徳天皇が、源義経の軍に追い詰められ三種の神器と共に入水しました。
この時に三種の神器のうちの八咫鏡と八尺瓊勾玉は源氏が回収する事が出来ましたが、草薙剣は安徳天皇と共に水没したわけです。
一説によると安徳天皇は八岐大蛇の化身であり、八岐大蛇が草薙剣を取り返し、海底に還ったとする伝説があります。
安徳天皇は悲劇的な亡くなり方をしており、こうした伝承が生まれたのでしょう。
常識的に考えれば安徳天皇は人間から生まれた「人」であり、八岐大蛇の化身だとするのは、後世の人々の創作だと考えるべきです。
八岐大蛇のゆっくり解説動画
下記は私が制作したゆっくり解説動画です。
八岐大蛇の話と正体の考察などをしています。