別天神は古事記における天地開闢の時に現れた五柱を指します。
別天神の面子は造化三神の天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神の三柱に宇摩志阿斯訶備比古遅神と天之常立神の二柱を加えた神を指します。
これらの神は天地開闢の時に生まれ出てきましたが、直ぐに隠れてしまい何をしたのかも分かりません。
日本書紀では、そもそも最初に国之常立神が現れ、別天神は飛ばされている様な状態です。
日本書紀では別天神の出番がなく、神世七代に話から始まっています。
それでも、別天神に選ばれた神々は、天地開闢の時に現れた特別な神だと言えるでしょう。
別天神は謎に多く包まれ実態もよく分かりません。
尚、別天神は全員が独神であり、性別がない事から単細胞生物の事を表すのではないか?とする説もあります。
因みに、別天神全員を祀っている神社としては、大元神社があります。
大元神社 | 愛媛県八幡浜市若山1-284 |
天之御中主神
天之御中主神は古事記に最初に登場する神様であり、日本神話における最高神として位置づけられています。
天之御中主神が別天神の筆頭と言ってもよいでしょう。
しかし、天之御中主神は現れたと思ったら、直ぐに隠れてしまい、その後は一切登場しません。
最高神にも関わらず、最初しか登場しない事で数多くの憶測が流れるのが天之御中主神です。
天之御中主神は記述が少ないが故に、様々な人が色々な事を考え、天之御中主神は人間の中にある魂だとか、宇宙の中心にいるとか、ビッグバンを表しているなど様々な事を言われています。
しかし、記述が余りにも少ない事で、多くの憶測を呼び様々な解釈をされているのが天之御中主神です。
高御産巣日神
高御産巣日神は別天神の中では2番目に登場します。
しかし、天地開闢の時には直ぐに隠れてしまいました。
高御産巣日神は隠れたはずですが、その後も何も無かったかの様に登場し「隠れる」とは何だったのか?という疑問も湧いてきます。
高御産巣日神は出雲の国譲りの時には、天照大神と共に地上支配への中心人物となるなど野心家ぶりを見せています。
尚、出雲の国譲りでは大国主に懐柔された天若日子に矢を投げるシーンがあります。
高御産巣日神は実態の無い様な神様ともされていますが、弓矢を投げ返した事から人間の造形をした神だとも考えられるはずです。
神産巣日神
神産巣日神が三番目の別天神であり、ここで造化三神の最後の神でもあります。
神産巣日神はサシクニワカヒメの依頼によりキサガイヒメ・ウムギヒメを地上に派遣し、八十神に殺害された大国主を行きかえらせたりしています。
大国主の相棒であるスクナビコナの親でもあり、独神でも子が作れる事が分かります。
スサノオが殺害したオオゲツヒメの体から種を取り出すなど五穀豊穣の神であり出雲神話に登場します。
別天神の他の神々と違い明確に人助けをした神だとも言えるでしょう。
宇摩志阿斯訶備比古遅神
宇摩志阿斯訶備比古遅神は別天神の中では4番目に登場した神です。
日本書紀の異伝である一書第三では下記の記述が存在します。
※日本書紀より
天地がぐるぐると回転し形がまだ定まらない時に、初めて神の様な人がいた。
これを可美葦芽彦舅尊と言う。
次に国底立尊(国之常立神)。
彦舅・・・これをヒコジと呼ぶ。
日本書紀の一書第二でも宇摩志阿斯訶備比古遅神が国之常立神や国狭槌尊よりも前に記載があり、日本書紀の異伝では宇摩志阿斯訶備比古遅神が最高神ではないか?とする言い伝えもあったと感じています。
それでも、宇摩志阿斯訶備比古遅神は古事記の順番では別天神の4番目の神という事になります。
尚、宇摩志阿斯訶備比古遅神は古事記では独神だとする記述がありますが、名前に「ヒコ(彦)」が付く事から男神だったのではないか?とも考えられています。
天之常立神
天之常立神は最後の別天神であり、国之常立神と対になっていると考えられています。
天之常立神は宇摩志阿斯訶備比古遅神と合わせて生命が誕生するプロセスを表しているとする説があります。
原始の海の中でたんぱく質やアミノ酸から生命が誕生する様子を描いているとする説です。
生命の誕生で考えれば、宇摩志阿斯訶備比古遅神が何もない所から生命を誕生させ、天之常立神が天から光を与えたといった所なのでしょう。
尚、天之常立神は別天神の最後の一柱ではありますが、特に目立った事をするわけでもなく隠れてしまいました。
天之常立神が隠れると古事記は神世七代へと続いて行きます。