古代日本 日本神話

高御産巣日神(タカミムスビ)が本当は最高神だった!?

2023年9月11日

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宮下悠史

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名前高御産巣日神
読み方たかみむすびのかみ
通称タカミムスビ
別名高皇産霊尊、高木神、高木大神
登場古事記、日本書紀

高御産巣日神は古事記における最高神の一人です。

特別な神という事で別天神にも数えられています。

天地開闢の時に、最初に天之御中主神が現れ、次に現れた神が高御産巣日神となります。

高御産巣日神の次に神産巣日神が現れました。

古事記の中で最初に出て来た天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神を造化三神と呼びます。

古事記の世界では高御産巣日神の極めて重要なポジションにいる神様だと言えるでしょう。

今回は造化三神の中でも、2番目の神である高御産巣日神を解説します。

尚、高御産巣日神は日本書紀では、高皇産霊尊とも書かれており、古事記とは違った役割を果たしています。

余談ですが、高御産巣日神の子に知恵の神と呼ばれる思金神がおり、思金神は天照大神天岩戸に籠ってしまった時に、お祭りを開いた事でも有名です。

三種の神器のうちの「八咫鏡」と「八尺瓊勾玉」は、思金神の発案により作られています。

造化三神の一人

古事記における高御産巣日神の最初の記述は、下記の様になっています。

天地が初めておこった時、高天原に成りました神の名は天之御中主神(アメノミナカヌシ)

次に高御産巣日神(タカミムスヒ)、次に神産巣日神(カムムスヒ)、

この三柱の神はいずれも独神(ひとりがみ)として成り、身を隠されました。

造化三神の記事でも書いたのですが、天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神の三柱は現れたと思ったら、何もせずに消えてしまったわけです。

この意味不明とも取れる始まりは、多くの専門家が様々な解釈をし、宇宙が出来る様子だとか、地球や生物が誕生する様子を描いているなど、様々な説が出てる状態と言えます。

尚、上記の文言からは高御産巣日神も独神となっていますが、独神は男女の性別のない神様を指します。

高御産巣日神の野望

高御産巣日神が最高神だった!?

古事記における日本神話の最高神は、高御産巣日神だったとする説が存在します。

造化三神の中で、最初に出て来た天之御中主神だけは、この後に登場は一切ありませんが、高御産巣日神、神産巣日神には出番があるわけです。

高御産巣日神は高天原でしか登場せず、神産巣日神は地上(葦原中国)でしか登場しません。

それらを考慮すると、高御産巣日神の「高」は天界を指し、神産巣日神の「神」は「下み」であり地上を指すのではないか?とも考えられています。

日本神話などは真中が空洞になりやすいとの指摘もあります。

イザナキが黄泉の国から帰還した後に生まれた三貴士の「天照大神」「月読命」「スサノオ」は、月読命だけが極端に記録がありません。

同じ様に、造化三神の中心の神である天之御中主神も、最初しか出番がないと言えるでしょう。

三貴士の話も元は天照大神とスサノオのみであり、月読命は後付けの神様だとも考えられています。

使者の選定に失敗

八十神を倒した大国主スクナビコナと共に出雲を大発展させています。

しかし、天照大神は地上は天津神が統治すべきだと考え、天忍穂耳命を派遣しますが、本人は行くのを嫌がり天浮橋から引き返してきました。

そこで、天照大神と高御産巣日神は神々を天安河原に集めました。

高御産巣日神と天照大神は思金神や神々と相談し、天穂日命を地上に派遣する事に決めます。

しかし、天穂日命は3年間戻らず、高御産巣日神と天照大神は再び神々を集め議論し、思金神の進言により、今度は天若日子を地上に向かせてました。

天若日子には天羽々矢と天之麻迦古弓を持たせましたが、今度は8年たっても報告もせず、天若日子は大国主の娘まで娶っています。

高御産巣日神や天照大神は日本神話の中では最高神とも言ってもよい立場にも関わらず、使者の選定に何度も失敗した事にもなるでしょう。

日本神話の神々の失敗を見ていると、一神教の様に神々に対する全知全能感は感じません。

高木神

高御産巣日神と天照大神は再び神々と相談し、天若日子に対し雉の鳴女を派遣しました。

高御産巣日神らは雉の鳴女を使って、天若日子が報告しない理由を問い質そうとしたわけです。

しかし、天若日子は雉の鳴女を天羽々矢と天之麻迦古弓を使って射殺しました。

天羽々矢の威力が凄まじかったのか、古事記では高天原まで飛んで行ってしまいます。

この時の様子を古事記には次の様に書かれています。

※古事記より

天安河原にいる天照大神と高木神の御所まで矢が飛んで行った。

ここで高木神という名が出ていますが、古事記には高木神の解説があり、高御産巣日神の別名だと記録されています。

高御産巣日神が高木神と書かれたりする事から、古事記や日本書紀は様々な神話を繋ぎ合わせて作られたのではないか?とも考えているわけです。

高御産巣日神の力

高御産巣日神は飛んできた矢を手に取ってみると、次の様に述べました。

※古事記より

天羽々矢「この矢は天若日子に授けたものである」

高御産巣日神は矢が天羽々矢だと確信すると、神々に見せて次の様に言い放ちました。

高御産巣日神「もし天若日子が命令を忠実に実行し悪神を射た矢が高天原まで飛来したなら、天若日子には命中しない。

しかし、天若日子に反逆の心があるならば、この矢で天若日子に禍あれ」

高御産巣日神は誓約を行った事になるのでしょう。

高御産巣日神は来た方向に矢を投げ返すと天若日子の鳩尾に直撃し亡くなりました。

古事記によるとこれが「返り矢」の起源であり、雉の鳴女が返ってこなかった事から、雉の頓使いという言葉が誕生したとあります。

しかし、弓矢を投げ返し同じ神である天若日子を射殺する辺りは、高御産巣日神の力の強さを感じました。

この後に天照大神や高御産巣日神は高天原にいる武闘派の神である建御雷神を派遣し大国主、事代主、建御名方神ら国津神を降伏させ地上を平定しています。

高御産巣日神と天照大神は最初は天忍穂耳命に地上を治めさせようとしますが、天忍穂耳命は辞退し代わりに瓊瓊杵尊が地上に出向く事になりました。

ここから先は、瓊瓊杵尊が天孫降臨で地上に行き、山幸彦、海幸彦など日本神話の部隊は地上に移っていく事になります。

これより先は高御産巣日神の出番も激減する事になります。

神武東征

イワレビコ(神武天皇)らは神武東征を行いますが、長髄彦に敗れた事や嵐で、兄の五瀬命、稲飯命、三毛入野命を失いました。

イワレビコ自身も熊に遭遇し倒れてしまいますが、この時に高倉下なる者が助けています。

高倉下はイワレビコに助けた経緯を語り、自分の夢の中に高木神(高御産巣日神)や天照大神が現れたと告げました。

高倉下の夢によると高御産巣日神は最初は建御雷神を派遣しようとしますが、建御雷神は地上を平定した剣(太刀)を送れば十分だと答えています。

高御産巣日神は、高倉下にイワレビコには下記に様に伝言せよと伝えました。

※古事記より

天津神の子孫よ、ここから奥には入ってはならない。

禍々しい神々が多くいる地である。

これより天上界から八咫烏を派遣致す。

八咫烏に従い道を行けばよい。

高御産巣日神は神武東征を成し遂げる為に、道案内役の八咫烏を派遣したわけです。

尚、古事記にはこの時の高御産巣日神を「高木大神」の言葉として記述されています。

高木大神も高御産巣日神と同一の神と考えて間違いないでしょう。

八咫烏はイワレビコを導き、長髄彦との再戦にも勝利し、イワレビコは大和の地に入り神武東征を成し遂げる事になります。

イワレビコは橿原で即位し神武天皇となり、これにより日本が誕生しました。

月の神

日本書紀の第23代顕宗天皇の御世に高御産巣日神の名前が登場します。

顕宗天皇の3年春に阿閉臣事代が任那への使者となりました。

この時に、阿閉臣事代に月の神が憑依し、高御産巣日神の功績を語っています。

日本書紀の話では月の神の高祖が高御産巣日神という設定になっています。

阿閉臣事代は月の神に田地を奉れば慶福が得られると語りました。

そこで押見宿禰が祀りを行い仕える事になったとあります。

高御産巣日神を祀る神社

高御産巣日神を祀る神社を紹介します。

四柱神社長野県松本市大手3丁目3−200263-32-1936
東京大神宮東京都千代田区富士見2丁目4−103-3262-3566
サムハラ神社大阪府大阪市西区立売堀2丁目5−2606-6538-2251
高木神社東京都墨田区押上2丁目37−903-3611-3459
御祖神社福岡県北九州市小倉北区妙見町17−2093-921-2292
高皇産霊神社石川県野々市市押野1丁目2076-241-0701
皇産霊神社静岡県田方郡函南町町畑109054-261-9030
高御祖神社長崎県壱岐市芦辺町諸吉仲触9
天神社奈良県大和高田市三和町2番15号0745-52-3382 
桜神宮東京都世田谷区新町3丁目21−303-3429-0869

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