イザナミは日本神話に登場し、夫のイザナギと共に国生みや神産みを行いました。
これにより日本列島が誕生しただけではなく、様々な神も誕生する事になります。
それを考えれば、イザナミは元祖・日本の母とも呼べる存在です。
しかし、イザナミはヒノカグツチを産んだ時に、大やけどにより亡くなってしまいました。
古事記における最初の犠牲者がイザナミだったと言えるでしょう。
黄泉の国の住人となったイザナミをイザナギが呼び戻しに来ますが、変わり果てた姿を見たイザナギは逃げ出してしまいました。
その後、イザナギとイザナミは黄泉比良坂の千引きの岩を挟んで口論となります。
イザナギはイザナミに決別の言葉を伝え、その場を去りました。
イザナギは日本で最初のヒロインとも言えますが、悲劇のヒロインになってしまったとも言えるでしょう。
イザナミの最後はハッピーエンドとは行かなかったわけです。
イザナミは日本神話の中では、余り人気があるとは言えず、その理由はイザナギとの最後の口論の中で発した言葉にあるとも考えられています。
尚、イザナミが祀られている代表的な神社に関しては、最下部の項目に記載してあります。
天地開闢
日本神話では天地開闢の時に造化三神、別天神、神世七代が神々が現れては消えました。
神世七代の最後にイザナミがイザナギと共に姿を現したわけです。
古事記や日本書紀を見る限りでは、イザナギとイザナミの両親となる神々は誕生してはおらず、イザナギとイザナミは何もない所から成り出て来たと言えます。
尚、イザナギとイザナミは「いざなう」という意味があり、誘いの神だとも考えられています。
名前から考えればイザナミもイザナギも誘い合った神となるのでしょう。
イザナギとイザナミは力を合わせて日本列島を誕生させ、大地を豊かにしていくわけです。
積極的な女性
神々はイザナギとイザナミに天沼矛を与え日本列島を作る様に命じました。
イザナギとイザナミは天浮橋から混沌とした下界を掻き混ぜ、オノゴロ島を造り出す事に成功します。
オノゴロ島に降り立ったイザナギとイザナミは天の御柱と八尋殿を建てました。
イザナギとイザナミは天の御柱を周り後ろで出会うと、イザナミは次の様にイザナミに述べました。
イザナミ「ああ。なんて素敵な男性なのでしょう」
イザナミの方からイザナギに声を掛けたわけです。
イザナギはイザナミから声を掛けてしまった事に不吉がりますが、イザナギとイザナミは結婚しまぐわいを行いました。
イザナギとイザナミは兄弟であり禁断の愛になるのではないか?と考える事も出来ますが、イザナギとイザナミに母親はおらず何もない所から現れた存在です。
それを考えれば、禁断の恋にもならないでしょう。
しかし、イザナギとイザナミが誕生させたのは、ヒルコとアハシマであり、国生みは失敗に終わりました。
二神は高天原の神々に相談すると、イザナミから声を掛けたのが原因とする答えが返ってきました。
イザナミの積極さが仇になってしまったと言えるでしょう。
イザナギとイザナミは再び天の御柱を周りますが、今度はイザナギから声を掛けました。
イザナギとイザナミは再び交わると淡路島が誕生し、これにより国生みは成功し、その後は次々に日本列島を誕生させています。
イザナミの死
重傷を負う
イザナギとイザナミは神産みを行い大事忍男神を最初に誕生させると、家宅六神など住居の神を産みました。
その後は自然の神々などを産み食料の神であるオオゲツヒメや造船を司る鳥之石楠船神らも誕生させています。
後に山幸彦を助けるワタツミを産んだのもイザナミとなります。
日本列島における多くの神を誕生させたのがイザナミであり、元祖・日本の母と呼んでもよい存在でしょう。
しかし、イザナミは火の神であるヒノカグツチを産んだ時に、大やけどをしてしまいます。
イザナミは重傷を負い容体は日に日に悪化しますが、重症となったイザナミの体からは多くの神々が誕生しました。
イザナミは重傷となっても汚物からは、鉱山の神や粘土の神など人間に役だつ神々を誕生させています。
これまでのイザナミはイザナギと協力しなければ神々を誕生させる事が出来ませんでしたが、瀕死の状態となったイザナミは自分一人でも神を産む事が出来る様になっていました。
イザナミの死の間際の状態は、人間は死期が近づくと不思議な力を発揮する暗示ではないか?とも考えられています。
しかし、イザナミは結局は亡くなってしまいました。
造化三神や別天神などの神々は姿を現して隠れたのであり、死んだとは書かれてはいません。
それを考えると、日本神話の最初の犠牲者はイザナミという事になります。
古事記にはイザナギはイザナミを出雲と伯耆の間にある比婆の山に葬ったとあります。
イザナミが葬られた比婆の山に関しては諸説がありますが、有力な場所としては島根県安来市があります。
イザナギはイザナミの命を奪ったヒノカグツチを許す事が出来ず斬り捨ててしまいました。
イザナギにとっては、子供が生まれた喜びよりも妻を失った悲しみの方が大きかったのでしょう。
イザナミの死は何を意味するのか
イザナミの死ですが、日本神話における神々は永遠の命を持つのではなく、寿命で死ぬことは無くても事故などで亡くなる事が分かるはずです。
後にスサノオが狼藉を働き機織女が亡くなっていますが、機織女も事故でイザナミと同じ部分の怪我をして亡くなりました。
イザナミが亡くなってしまった、もう一つの理由が地上に降り立った時に肉体を得た事が原因だともされています。
高天原は魂の世界であり、魂の世界であれば体が傷つくこともないし、死という概念は生まれないとする説です。
尚、イザナミの死は古代の出産の大切さを物語っており、出産する時に母親だけが亡くなってしまう事例も多かったとされています。
子供を生んで亡くなったいイザナミは母親としてのシンボルの様にも見えるわけです。
イザナギとの決別
黄泉の国の住人
イザナミは黄泉の国の住人となります。
しかし、イザナギはイザナミを黄泉の国まで迎えにきたわけです。
イザナミは黄泉の国の建物の中におり、イザナギの声に反応しました。
イザナミはイザナギが迎えに来てくれた事を喜びはしましたが、黄泉の国の食事を食べてしまい地上には戻れないと伝える事になります。
イザナミが黄泉の国の食事を食べた事は「同じ釜の飯を食う」の話であり、黄泉の国の仲間入りした事を表すとする説もあります。
イザナミは黄泉の国も神々と話し合いをするといい「決して見ないでほしい」と言いました。
イザナギはイザナミを待ちますが、我慢が出来なくなりイザナミを見てしまいます。
イザナミの体には八柱の雷神がうごめいており、約束を破ったイザナギをイザナミは威嚇しました。
イザナミを見たイザナギは恐怖し、地上を目指し走り出しました。
日本神話でも日向三代の豊玉姫が「見ないで」と言ったのに山幸彦は見てしまい逃げ出していますし、世界の神話でも「見るな」と言われると見てしまうのがお決まりとなっています。
決別
逃げたイザナギをイザナミは黄泉醜女や黄泉の国の軍隊を使って追いかけさせました。
しかし、イザナギは黄泉の国と地上の境目である黄泉比良坂まで逃げ延びて、千引きの岩で黄泉の国を塞いでしまいます。
これによりイザナミは黄泉の国から出られてなくなったわけです。
黄泉の国から出られなくなったイザナミは、イザナギに次の様に述べました。
イザナミ「愛おしい我が夫よ。貴方がこの様な酷い事をするのであれば、私は貴方の国の人草を1日に千人殺す事に致しましょう」
イザナミが日本の母と呼べる存在なのに、不人気な部分があるのはイザナギとの決別のシーンで「1日に千人の人間の命を奪う」と言っている事でしょう。
イザナギはイザナミの言葉を聞くと負けじと「ならば自分は1日に千五百の産屋を建てる」と述べました。
日本書紀では菊理姫と泉守道者が現れイザナギとイザナミを仲裁した話があります。
イザナギとイザナミは決別し、これが日本で最初の離婚だとも考えられています。
尚、イザナミの人草の言葉から、既に人間が誕生している事が分かりますが、日本神話には、どのタイミングで人間が誕生したのかの描写がありません。
イザナミは黄泉大神となり、日本神話からはフェードアウトする事になります。
日本で最初のヒロインは悲劇のヒロインとなってしまったわけです。
尚、イザナギはイザナミと決別した後に、禊を行い天照大神、月読命、スサノオの三貴士を誕生させました。
イザナギは高天原を天照大神に任せ、月読命には夜の国、スサノオには海原を統治する様に命じます。
しかし、スサノオは任地に行かず「母親に逢いたい」と泣き叫びました。
スサノオはイザナギの鼻から生まれたのであり、母親はいないはずですが、スサノオのいう母親はイザナミを指すのではないか?とも考えられています。
日本神話は様々な神話の組み合わせで出来ており、整合性が取れていないとも指摘されていますが、スサノオとイザナミの関係に関しても同じ事が言えます。
イザナミが祀られている神社
揖夜神社 | 島根県松江市東出雲町揖屋2229 | 0852-52-2043 |
伊射奈美神社 | 徳島県美馬市美馬町中鳥589 | 088-624-6101 |
十二社熊野神社 | 東京都新宿区西新宿2丁目11−2 | 03-3343-5521 |
伊射奈岐神社 | 大阪府吹田市山田東2丁目3−1 | 06-6877-5921 |
白山神社(新潟) | 新潟県新潟市中央区一番堀通町1-1 | 025-228-2963 |
江田神社 | 宮崎県宮崎市阿波岐原町産母127 | 0985-39-3743 |
おのころ島神社 | 兵庫県南あわじ市榎列下幡多415 | 0799-42-5320 |
六所神社(千種) | 愛知県名古屋市東区矢田南1-6-37 | 052-711-3609 |
鷲尾愛宕神社 | 福岡県福岡市西区愛宕2丁目7−1 | 092-881-0103 |
比婆山久米神社 | 島根県安来市伯太町横屋486 | 0854-37-1000 |